スピンオフPink chanmery | ナノ


▼ 3

まだわからない。

憶測だ。

貴大を考えず、キャバクラ内だけをみれば、内部犯行にも見える。

内部。

大地は篠山を見た。

同じ事を考えたらしい。目が合った。

小物を外部からの人間が盗るだろうか。

「金品は?」
「あります」
セリカは、もともとお店にはあまり持ってきてないとも付け加えた。

「前もそう。お金は盗られてないの」

内部犯行が濃くなる。

いや、殺人と盗難の犯人が同一とは限らない。

大地と篠山は店の開店時間までの僅かな時間、詳しく話を聞いた。



「はぁ……」
夜遅くに帰って来た大地は、帰って来たままのスーツ姿でベッドに横になった。

「疲れた……」
瞼が落ちそうだった。

着替えて風呂、そう思うものの、身体は睡眠を求めて動かない。いつしか深い眠りに落ちていた。


セットしていた携帯の目覚ましがなる。

うっすら目を開けた。

無理やり身体を起こし風呂場に行く。スーツはしわくちゃになっていた。

鏡を見れば顔色が悪い。

寝不足。

この山が終われば休み取るぞと思いながら、スーツを脱いでシャワーを浴びた。

シャワーを浴びすっきりした大地は新しいスーツを着る。

飛び出すようにして家を出た。


「篠山さん」
「おー。おはよー、神谷。お前、寝癖付いてる」
「急いでたので」
笑って手櫛で直そうとする。

「なぁ、神谷。名取に聞きたいことがある。支店が開き次第、行くぞ」
「あ、はい」
盗難の話を里香から聞いて知っていた。他にも知ってることがあるかもしれない。


支店に向かう午後、歌舞伎町が目を覚ます時間。

支店オーナーに貴大を呼んで貰おうとした。
いつもなら開店前に出勤してくる貴大が大地を見つける。が、今日はそれがなかった。

「飛路なら今日は遅い」
「なぜ?」
「怪我して病院です。喧嘩してね」
「相手の男も病院ですか」
「関係ないでしょう」
「怪我したって、傷害でしょう。これ」
篠山が大きな声を出す。

「……相手の人、東雲弾。東雲の若頭です」
蓮華のみかじめを取っているヤクザだ。この間チラリと見た。組長の横に従う若頭を。

「若頭が先に手を出しました。もちろん、飛路も悪いんですが。なので、内々に収めたい。相手がヤクザということもあって、飛路も警察には届けないと言いました」
文句ありますか、とでもいう顔で大地と篠山を見てくる。

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