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「篠山さんは名取だと思います?」
「名取は怪しいよ。被害者を一番良く知ってんのは奴だ。けど、まぁ8割がたシロだろ。被害者とトラブルはないだろし、な」
大地は頷く。
貴大は高校を卒業して上京。仕事をし始め一月もしないうちにやめ、それから、ある女性のヒモになる。点々と女を変え、ヒモ最後の女性が里香だった。
どの女達も、貴大を家に置き、3ヶ月から半年くらいで別れているが彼女達は貴大を嫌いになって別れたのではないという事。貴大は愛されていた。
別れた原因は貴大が心から愛してくれないから。
身体の関係はあったが、貴大の心は彼女達に向かわなかった。たから、辛いから、彼女達から別れを切り出した。あっさり貴大は彼女達の家から出て行った。
捜査でわかったことだ。
貴大は里香を殺してない。
彼女達と貴大はトラブルはない。里香もなかったはずだ。親切に仕事まで見つけてきてから別れたと察しが付く。
「ウラ取らないと」
だが、貴大を容疑者から外すと犯人がいないかのように犯人らしき人物は浮かび上がって来ない。
「あ、モノ盗られていた女の子以外にモノ盗り被害者いました?」
「いや、セリカってコ以外はいない」
「盗られていたモノって鏡とか口紅とか?」
「よくわかったな」
大地は逃げていく人影が通ったであろう道を調べていたので盗られたモノまで聞いていなかった。
「……被害者もモノ盗りにあっていたと聞いたので」
「らしいな。セリカってコも初めてじゃないそうだ」
「まさか、第二の被害者とか、なりませんよね?」
まさかと言いつつ、篠山は笑わなかった。
「要警戒」
大地は篠山の言葉に了解と答えた。
「応援頼みましょう」
これは殺人事件でまだ起こってから10日も経っていない。この捜査に携わる刑事はまだ多い。
キャバクラの店――mermaid(マーメイド)、ここで里香は働いていた。
店内を入ると、見つかりました? と聞いてくる女の子がいた。
セリカだよ、と篠山が耳打ちしてきた。
残念ながらと答えた。
「つ、次、私なのかな」
真っ青な顔でセリカは聞いてくる。
モノ盗りにあっていた里香。その里香が殺された。他にモノ盗りされていたのはセリカだ。次に殺されるのはセリカ。そう考えてしまうのは仕方ない。
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