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蓮路は助手席に乗り、拓海が運転席に座る。
蓮路の車、マーチ。
走る景色の中、レンタル屋が目に付いた。
「DVDでも借りるか。夜観ながら寝よう」
車がレンタル屋を通り過ぎる。
「帰りね、蓮路さん」
そしてデートに車を停めたのは大型ショッピングセンターだった。
「あ、俺、本屋行きたい」
肩を並べて拓海と歩く。
「拓海、背、伸びたな」
「え、そう?」
「それ以上伸びるなよ。大型犬」
「ワン」
拓海は身長187センチという長身。
蓮路は決して身長は低いほうではない、173センチ。
本屋を見て周り、CDを見て、ブラブラといろんな店を見て、センターを出た。
途中で見つけたパスタ屋で食事し、帰って来た。
「疲れたー」
リビングのソファーに拓海はダイブした。
「運転、ご苦労」
拓海の髪をくしゃっと撫でる。
気持ち良いのか拓海は目を閉じた。
ポケットから煙草とジッポを出して煙草に火を付ける。
唇に乗せていた煙草を拓海が横から取りあげた。
一口吸い、蓮路の唇に煙草が返ってくる。
「間接キス」
拓海が笑った。
そこへ、みーっと猫の鳴き声。
「ごめん、お前の事、忘れてた」
傍らに座ってご飯の催促。
「悪い、待ってろ。すぐだから」
慌てて飼い猫のご飯、猫用缶詰めを開けるため蓮路はキッチンへ走る。
蓮路の足にじゃれながら猫は付いて来た。
「ははっ、かわいー。チビ、来い来い」
近くにあった猫じゃらしで拓海が猫を呼ぶ。
けれど、チビは見向きもしなかった。ちょうど蓮路が缶詰めを開けたところだった。
「食い気の方が勝ちやがった」
「そんな事ないぞ」
ステンレスの器を持って蓮路が戻ってくる。チビもご飯があるので一緒に付いて来る。
器を拓海に渡し、変わりに猫じゃらしを持ってキッチンへ戻る。
チビの視線は、けれど蓮路を見ていた。
「来い、チビ」
蓮路が猫じゃらしを一降りする。
チビが猫じゃらしに飛び付いた。
「何、それ」
「真の飼い主をよく判ってるコだ」
「普段オレが世話してやってるのに、恩を仇で返された」
拓海はチビに向かって薄情者と呟いた。
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