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蓮路はうっすら目を開けた。
もぞりと寝返りを打った。
「蓮路さん?」
声のした方向へ顔を向けると風呂上がりの拓海と目が合った。
「おはよ、蓮路さん」
拓海がベッドの上に乗り上げて蓮路に軽いキス。
拓海からふわりと石鹸の香りがした。
もう少し拓海の唇を堪能したくて拓海の首にかかっているタオルの両端を握る。
「もっと、拓海」
はいはいと拓海の唇が再び降りてくる。
「オレの方が蓮路さんに夢中だったのに、今じゃ蓮路さんの方がオレに夢中だよね」
そんなこっ恥ずかしい事を言われ、恥ずかしいのをごまかすように腹に蹴りを入れた。
「バーカ」
ベッドから出て風呂場に向かった。
拓海と出会ったのは1年前だ。
中学からの親友、昴と新の3人で呑みに行った先が拓海のバイト先の居酒屋だった。
その時は思いもしなかった。
26年生きてきて、ノーマルだと思っていた自分が6つも年が違う年下の、男に告られ、あまつさえ、好きになるなんて。
シャワーを浴びて出て来た時、拓海はぴこぴこ携帯を弄っていた。
拓海は蓮路に気付いてパタンと携帯を閉じた。
「よく寝た」
「ほんとよく寝てたよね、蓮路さん」
「昨日、ハードだったからな、仕事。疲れてるのに、お前はしたがるし。おかげでせっかくの休みが台なしだ」
「ごめんごめん。そのかわり蓮路さんの好きな杏仁豆腐買ってきたから機嫌直して?」
拓海はコンビニで買った杏仁豆腐を冷蔵庫から出し、蓮路の前に置いた。
「まぁいいか」
杏仁豆腐を一口、口に放り込む。
「飯どうする? 俺作るのたるいんだけど」
「じゃあ、どっか食べに行こう」
「たまにはいいか。何食う?」
「パスタ!」
「んじゃもうちょっとしたら食いに行こう」
杏仁豆腐を平らげた時、拓海が隣りに座った。
「ね、ドライブしよ?」
「どっか行きたいのか?」
「そういうわけじゃないけど、あえて言うならデートドライブ」
「あー最近デートしてないな。いいよ。そのかわり運転しろよ」
「了解」
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