Pink champagne | ナノ


▼ 12

コンビニまで歩いて10分。

大地はいた。

店内に入り大地の側へよる。

「大地」
顔を上げた大地は蓮路を見て立ち読みしていた雑誌をラックに戻した。

「今日、蓮路の家に行ってもいいか」
「いいよ。昴いるけど」
「昴?」
「覚えてないか、中学の時会ってるけど」
大地は首をかしげた。


蓮路達の親が離婚したのは中学の時。蓮路は父に付き、大地は母と家を出て神谷になった。

その少し前、大地は昴に会っている。

大地が転出する前、昴は蓮路の家に来て大地と顔を合わせていた。
クラスは違ったため大地と昴は面識はそれまでなかった。


「大地」
後ろから声がかかる。
大地が振り相手を見る。

「久し振りじゃん」
「……なんで」
「ああ、オレ今こっちに住んでんの」
男が大地の横にいる蓮路の顔を見て驚いた顔をする。

「え、何。同じ顔してんだけど」
大地が蓮路を隠すようにして男に立ちはだかる。

「大地、双子とかだったのか」
「……」
男は大地の肩越しに眺めるようにして蓮路を見た。

男の手が蓮路に伸びる。大地がそれを払った。

「触るな」
「まださわってねーじゃん。怒るなよ、大地」
男がにこりと笑ったかと思えばがっと大地の胸倉を掴み引き寄せた。
そして大地の唇に噛みつくようなキスをしていた。

その展開に蓮路は見ている事しか出来なかった。

「や、め……っ」
抵抗しているようで大地は本気であがらう事をしてはいない事に蓮路は気付く。

「大地」
男が大地の名を囁く。
大地の抵抗はなくなる。

「なぁ、大地。やり直そうぜ」
その言葉に大地も男と付き合っていたのだと知った。

「嫌だ」
胸倉にあった男の手を振り払う。

「なんで? まだオレの事好きだろ」
大地の目が鋭く男を見た。

「お前、いるんだろ。恋人」
「いないよ」
男は否定する。

「嘘つき。お前の後ろにいるの、そうじゃないわけ?」
はっと男が振り返るがそこには誰もいない。

「嘘つき。ヒロの言葉はいつだって嘘だ。……俺、恋人いるから浮気は出来ない。行こう、蓮路」
大地は蓮路に顔を向け歩き出した。
蓮路も歩き出す。

大地は何も言わなかった。だから蓮路も何も聞かなかった。

離れた場所で蓮路が振り返る。男はまだそこにいた。目が合ったような気がした。

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