▼ 6
3人分の焼飯をテーブルに置き、蓮路は拓海の横に座った。
「蓮路」
「ん?」
「ハルが言うなって言うけど、やっぱ言ったほうがいいと思うから言う」
「何、どうした?」
蓮路は親友の顔を覗き込んだ。
「今日、通夜があった。……スミハル先輩の」
「……そう」
口の中で小さく返事を返した。
「驚かないな」
「まぁな。……ハル、それでいないのか」
昴は頷いた。
「明日、葬式?」
「うん」
蓮路は立ち上がってキッチンから日本酒を持ってきた。
「葬儀には行けないから、俺らはここで飲もう」
「……ああ」
拓海は黙って2人を見ていた。
拓海の知らない蓮路の過去。
葬儀に行けない理由。今は聞いちゃいけないと思った。
「新、知ってるのか?」
「昨日……。今日、蓮路に言いに行くって言ったら来るって」
間が良くチャイムが鳴る。
「来たか」
蓮路が立ち上がり、玄関の鍵を開けた。
新の心配そうな顔にぷっと吹き出した。
「なんだよ」
新の眉が寄る。
「いや……」
「……聞いた?」
その問いに蓮路は頷いた。
「ほら、上がれ」
新を招き入れた。
昴の食べてるものに目をつけ蓮路を見る。
「何、お前も食う? ちょっとしかないけど」
「うん」
「拓海君てスミハル先輩の話、蓮路から聞いてる?」
昴に聞かれて拓海は首を振った。
「だろうな」
「できないだろ」
新が口を挟む。
新の焼飯の皿を置いて、蓮路が座る。
「スミハル先輩が来た」
昴が納得した顔で蓮路に顔を向ける。
「なんか言ってた?」
「え? 来た?」
きょとんと拓海が蓮路を見る。
「ばっか! 夢ん中だよ」
拓海の額をこづいて、昴に言った。
「『バイバイ蓮路』って。笑ってた」
「笑ってたかぁ……」
昴が笑顔になる。
「良かったじゃん。笑ってくれてさ」
新が言うと蓮路は頷いた。
「スミハル先輩って、ハルのはとこでさ。あ、ハルに会ったって? 拓海君」
「はい」
「かっこいいだろ? あ、でも拓海君から見たら蓮路のほうがかっこいいか。……スミハルって澄む春ってかいて澄春なんだ。蓮路に片想いしてた人なんだよ」
「蓮路さんに?」
そうそうと昴と新が同時に首を縦に振った。
「澄春さんてどんな人だったんですか?」
「蓮路、答えてやれよ」
新がにししと笑う。
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