Pink champagne | ナノ


▼ 5

「なぁ、拓海」
「何?」
「今度の定休日、どっか行くか」
「どこに?」
パスタをフォークに巻き付けていた拓海の手がとまる。

「それを決めんだろ」
「じゃあ、温泉。温泉」
「温泉かぁ、いいな」
「やった! 温泉、決定」
「あ、待て。お前学校あったな」
「1日くらい……」
「そだな、日帰りだしな」
拓海の右手が動き出す。
ここが二人きりの場所なら、拓海に手を出してたな、と心の中で苦笑する。

それだけ拓海不足って事か。

「蓮路さん?」
拓海が不思議そうに覗き込んでくる。
「どうかした?」
「なんでもない」
笑って誤魔化した。



店を出て近くの公園に足を踏み入れる。

「そこの川にメダカがいるの知ってるか」
「え、いるの!?」
「いるんだよ、この間発見した」
拓海が池を覗く。

「あ、いる。マジ、いる。え、なんで?」
「水がキレイなんだろな」
「あ、確かに濁ってない」
メダカは水がキレイじゃないと生きる事が出来ない。

「メダカって、絶滅の危機にある魚じゃなかったっけ?」
「ああ、なんか聞いたことあるな」
「なんでいるんだろ」
「さーな。ま、大方誰かがこの川に放したんだろうけど」
話ながら近くのベンチに座る。

拓海はまだ川を見ていた。
「あー、いい天気。このまま寝れたらサイコーなんだけとな」
蓮路は目を閉じる。
日差しを受けて、眠くなる。

「蓮路さん」
すぐ近くで拓海の声。
拓海が隣に座った。
ベンチに置いた手の上に拓海の手が重なる。

いわゆる、恋人繋ぎといわれる、繋ぎかたにになる。
蓮路はそっと手を握る。
「拓海」
「ん?」
「今日なるべく早く帰る」
「うん、待ってる」
拓海が肩を寄せてくる。

拓海愛用の香水がふわりと香った。



サロンに戻ると神楽が真剣な顔して髪を切っている姿があった。

「あれが?」
佐竹に耳打ちする。
「そ、三鷹廉時先輩」
すらりとした細身の男性。

神楽と並べば似合いそうな感じではあった。

「レンジっていうんだ、あの人」
「あれ、タキの恋人」
佐竹が拓海に気が付いた。
「佐竹もレンジだぜ」
付け加えるように蓮路が拓海に言った。
「ふうん」
興味なさそうに頷いた。

「あ、そろそろ大学戻る」
「気を付けて行けよ」
拓海は笑って手を降った。

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