Pink champagne | ナノ


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「神楽さん、まさか」
はっと蓮路は神楽を見て言った。
「そのまさかだ」
「何ですか?」
わけわからないと佐竹の顔が言っていた。

「今度は誰ですか?」
「んー、今度は女じゃないんだな」
「は?」
「なんだ、びっくりする事か、男の恋人持ちが」
「なんで知ってっ!」
神楽が唇に人差し指を立てる。

「人生長いと見えてくるものがあんだよ」
神楽が蓮路の額をこづいた。
そんな店長、神楽奏は31歳だ。

「で、だ」
「いつものように偵察に行けですか」
「違う違う。もう知り合ってるんだわ」
「今回は早い展開ですね」
「まぁな。……」
そこで神楽は黙った。

「来るんだよ、今日」
今日の予約表を掲げた。

名は、三鷹廉時。

「あ」
佐竹が声を上げた。

「オレ、こいつ知ってますよ」
「三鷹を?」
「ええ」
「そうか」

「どういう知り合い?」
つい好奇心で蓮路は聞いていた。

「高校の時に世話になった先輩。よく一緒にいたせいか、さっきの店長じゃないけど、ダブルれんじって呼ばれてた」
「ああ、レンジだな、名前」

ポピュラーなのだろうか、レンジという名は。

「オレらは何したら?」
「ポカやらないよう見ててくれ」
「大丈夫でしょう、神楽さんなら」
「蓮路は買い被りスギ」
「そうですか?」
にやっと蓮路は神楽に笑ってみせた。

「蓮路」
「何ですか」
「蓮路のその顔、嫌いじゃあない」
「それはどーも」

「そそる」
ぼそっと佐竹が口にした。
「ああ?」
「確かにな」
神楽までそんな事を言う。

「仕事しろ」
そう言ってその場を離れた。




ああ、拓海に逢いたい。
ふいにそんな事を思った。

今朝逢ったのに、と苦笑する。

ああ、そうか。
拓海に触れてない。
拓海が一晩家に帰ってから。

「あああ、くそっ」
拓海欠乏症かよ、呟いて。
拓海を頭の中から締め出した。


「タキ、昼1時、予約入った」
神楽がそっと寄ってきてそう告げた。

昼休憩はどこに消えやがった!

「店長……」
顔を上げた時、そこにもう店長はいなかった。




「お前だったか。俺の昼休憩をなくしてくれた奴は」
「ええっ?」
拓海はきょとんとした顔で蓮路の前に立っていた。

「神楽さんから電話あって、蓮路さんが1時から休憩だから一緒に飯食ってやれって」
「はっ?」
「蓮路、いってらっしゃい」
神楽店長がぽいっと店から蓮路と拓海を追い出した。

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