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「タキと呑むなんて思ってなかったな」
拓海がバイトしている居酒屋に、佐竹と入る。
蓮路の連れが昴や新ではないのに拓海は不思議そうな顔をしていた。
「あれ、俺の恋人」
「男?」
「そう」
蓮路は佐竹を見た。特に嫌悪感はなさそうだ。
「なぁ、タキ。オレらって似てるな」
「似てる?」
「境遇がな。オレもさ、双子の兄貴がいる」
「へぇ、そうなんだ?」
昨日大地は店に来たから佐竹は蓮路が双子だと知っている。
「で、恋人が男。店では彼女にしてたけどな」
「そうか」
「身近に仲間がいないから、相談する奴もいなかった。でも、いるもんだな。近くに」
席に着くと拓海がおしぼりを持ってきた。
拓海の目が、こいつ誰?と語っていた。
「あれ、君。うちの店に何度か来たよね」
佐竹が拓海を見て言った。
拓海のとまどったような瞳。
「忘れられてる? タキと同じ店で働いてるレン」
「ああ……」
ようやく思い出したようだ。
「オレ、生中。タキは?」
「んー、俺も」
気付けば、朝だった。
がばっと起き上がる。
自分の家だった。
なぜか佐竹がいた。
「おはよ、蓮路さん」
にこっと拓海が笑う。
「酒の許容量くらいわかってろよ」
大地が横から顔を出した。
「スミマセン」
謝ってしまう。
「で、なんで佐竹がいるんだ?」
「覚えてないの?」
蓮路は首を振った。
「めずらしいよね、あそこまでべろんべろんになるなんて。蓮路さんが、泊まっていけって、佐竹さんに言ってたよ」
まだ夢の中の佐竹が寝返りをうつ。そうして目を開けた。
「……。ああ、そうか、タキの家か」
2人はサロンのドアを出勤ギリギリの時間に開けた。
「めずらしいわね、遅刻ギリギリなんて」
リサが2人に声を掛けた。
佐竹と目が合う。とたんに笑いあっていた。
「あらー? いつの間に仲良くなってるのぉ?」
「ねぇ?」
隣にいた奏子まで頷いた。
「ほらいつまでたむろってる。働け働け」
店長の神楽さんが割り込んできた。
「あーと、ダブルれんじ。ちょっと来い」
ちょいちょいと手招きする。
「お前ら、カノンて店、知ってるか?」
「午前5時まで営業しているバー、ですよね」
佐竹が神楽に聞き返す。
この店からも近い。
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