Pink champagne | ナノ


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「いつまで機嫌悪いんだ」
昼休憩、佐竹が話し掛けてきた。

こいつも名前がレンジだったり。確か字は煉二。

「ほっとけ」
蓮路は不機嫌を隠しもせず言いやった。

「客逃げるよ、タッキー」
「タッキー言うな。某アイドルじゃあるまいし」
「じゃあ、瀧川蓮路」
「次はフルネームか」
蓮路はちょっと笑う。

「タキはさ、そうやって笑っててよ。じゃないと幸せが逃げるよ」
ね、と佐竹が笑う。





朝、起きたら珍しく拓海が起きていた。
前の晩、次の日も仕事があるからと大地と拓海より早く寝た。

聞けば2人は徹夜だと言う。

蓮路の機嫌の悪さの原因はこれだった。
前の晩、感じた不安がよぎる。





「なぁ、佐竹」
「何?」
「動物ってみんな恋するのかなー」
「……どうしたんだ、お前。変。それ、機嫌悪いのと関係あるのか?」
「ねーよ。や、ある、か? や、ない」
「どっちだよ」
笑いながら佐竹は答えた。

「するんじゃねーの。恋の季節とかゆーし? 動物のメスだって気に入ったオスにしか交尾させないし」
「じゃ浮気は?」
「……されたのか?」
「されてないし! してもない!」

怒鳴るなよ、と佐竹が煙草に火をつけた。

なんとなく奪ってやりたくなって煙草をかすめ取る。

「手癖が悪い」
文句を言われたが、返せと言われなかったのをいいことに煙草を吸い出した。

蓮路に煙草を奪われた佐竹は2本目に火をつけた。

「狼はしないよ」
「へえ」
「狼はずっと同じ伴侶と共に過ごす。おれは狼でありたいね。ま、まず相手捜さないとな」

紫煙を吐きながら、煉二は遠くを見るかのように天井を見た。

「……彼女と別れたのか」
「口に出して確かめるな。そうだよ、別れたよ? 浮気だ浮気。こっちは仕事だって言ってるのに、浮気だって騒がれて、それなら私もしてやるって、マジ浮気しやがった」
「呑みに行くか」

煉二への慰め会。と、自分への励まし会だ。

「奢りだろうな」
「せこいぞ。佐竹」
「じゃ行かね」
「付き合い悪いね、佐竹君」
「悪くて結構。ま、お前に彼女の事話してちょっと気が晴れた。行ってやるよ」


うん、お前には、話せそうだよ、佐竹。
……拓海の事をさ。

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