最強男 番外編 | ナノ


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東雲組が懇意にする情報屋ですら壱について情報屋を掴めていなかった。

「気になって捜してみた」
「よく見つけたな」
要はニッと笑って見せた。

「……ん」
壱が目を覚まし、眩しそうにする。

「壱」
「……誰だよ」
千鷹を認識していないようだった。

「東雲千鷹」
「しののめ!? 東雲、千鷹」
壱は睨むように千鷹を見た。

「まさか壱がこんな若造だとは思わなかった」
若造といっても千鷹とそう年齢は変わらないだろう。

「ここ、何処だよ」
壱は後ろ手に縛られ横になっている。

「蔵の中だ」
要が答える。

「殺されんの、オレ」
壱は真っ直ぐ千鷹を見ていた。

「さぁな」
千鷹は笑う。

「まぁ、別に殺すつもりでここに連れてきたわけじゃない。春、ロープ解いてやれ」
「はい」
手と足を縛るロープを解く春。だが目は逃げられないよう警戒していた。

「壱。お前のフルネームは? 壱は情報屋としてのハンドルネームだろ」
「あんたに答える訳ないだろ」
「口、悪いな。お前。俺はお前に名乗ったぜ」
「……壱。名字なんてない。ただの壱だ。オレ、戸籍ないから」
「戸籍がない?」
聞き返せば、壱は起き上がって皮肉気に言った。

「オレには基本的人権すらない。戸籍がないから国民ですらない。殺せよ。オレ、東雲組の情報、あちこち流したぜ」
「どこに?」
「言うと思うか」
「思わないな。まぁ、いいさ」
楽観的に答える。壱は怪訝そうに千鷹を見た。

「この蔵には東雲組のものが沢山ある。おいしい情報があるかもな。また、会おう。壱。要、引き上げだ」
「いいのか」
要が聞いてくる。

「ああ。時雨が首を長くして俺の帰りを待ってるんでね」
「オレを置いていく気か」
壱が聞いてくる。

「何だ、情報欲しいんだろ」
「やるって言われて取るなんてできるか!! 依頼もとりあえずない。依頼されたもの以外を外には出さない。それ以上の事を知っても。それがオレのポリシーだ」
「へぇ……。……新宿までおくってやる。立て」
「逃がしていいのか。依頼があればオレは探りにくる」
「待ってる」
「……変な奴。次は盗まれないって言うつもりか」
「本当に盗まれていいものしか外に出ていないからな。盗まれてはならない情報は厳重に鍵かけて保管してる」

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