最強男 番外編 | ナノ


▼ 009

千森と音をたてないように事務所に入る。
襲撃者がまだいるかもしれない。

事務所の奥に組員がいた。彼らも怪我をしていた。

「組長は?」
そっと聞くと上を差した。2階にいるのだろう。頷いて千森と階段を上った。

2階の奥に千鷹はいた。ソファーに神流は横になって目を瞑っていた。

「千鷹」
机の上に座る千鷹に声をかける。ゆっくり首を動かし時雨を見た。

「時雨、屋敷に帰るぞ。千森、あと頼む」

千森は頷く。

「神流は?」
そう聞くと神流は目を開けた。

「……たいしたこと、ない……」
苦しそうに息をしながら起き上がる。

「肋骨イってる。千森と病院行ってこい」
神流は頷いた。

「時雨、行くぞ」
「あ、はい」
事務所を出る時に周りを確認して千鷹を外に出す。

「車は?」
「ホテルに」
「タクシーで帰るぞ」
意図を察し、時雨は駅へと向かう。

襲撃者がホテルに止まっている東雲組の車に細工しているかもしれないという可能性。

事務所から目と鼻の先にある千森のラブホテル。狙われてもおかしくはない。

「久遠寺?」
「ああ」
「神流が肋骨折るって事は、かなり洗練された奴が襲撃して来たな」
「折れてはない。それはさすが“日立”だ。ガードされた。ヒビくらいだろ」
「……そうか」
「俺の動き止めてくるから、敵だと思っておもいっきり肘入れてやった。それが神流だったんだ」
「……」
「あいつも悪いんだぜ。いきなり来るから。声かけりゃ、いいのに」

駅でタクシーを拾い、千鷹と時雨は世田谷の屋敷に帰ってくる。

いつの間にか雨は止んでいた。

「時雨。風呂入ろうぜ」
「うん」
朝入った桧風呂ではなく、ジェットバスのほうに千鷹は入った。

脱衣場で服を脱ぐ千鷹の身体を眺める。

「お前も脱げ」
服を脱がない時雨に千鷹は促す。

「千鷹」
「何だ?」
裸になった千鷹が近付いて来て、時雨のシャツのボタンに手をかける。

「今日みたいに千鷹の“日立”を神流にして貰うとか、いやだ。僕が、千鷹の“日立”だ。僕のいないところで千鷹が何かに巻き込まれるなんて、耐えられない……」

「俺の“日立”は、お前だけだ。お前しかいない。お前の代わりはいない。俺の“日立”はお前だ、時雨」
珍しく茶化さず千鷹は答えた。

「大好きだ、千鷹」
呟くように言って千鷹に抱きつく。

「時雨」
抱き返してくれる千鷹の腕。
大好きな人の匂いに包まれる。

けれど、この腕は本来時雨のものではない。今だけ、今だけと思いながら抱きつく腕に力を入れる。

「時雨……」
耳元で囁かれる千鷹のバリトンの声が時雨を震わせる。

千鷹を見上げれば、真っ直ぐ時雨を見ていた。見つめ合う。

「千鷹。キスして……。まだ、今日は終わってない。甘やかしてくれるんでしょう?」
ふっ、と千鷹が口角を上げて笑う。

「とことん甘やかしてやるよ。ウサギちゃん」
甘い千鷹の声に酔う。

目を瞑ると瞼に唇が降りてきた。

シャツのボタンが外される。肩から抜かれて後ろに落ちた。

「エロい身体してんな。俺好みの身体だ」
千鷹の指が胸を滑る。

「……ッ」
胸の突起を指が掠める。

指が下へ滑りズボンに掛かる。

両手でボタンを外しジッパーが降ろされる。

「エロ……。も、これだけでお前の、タって自己主張してんじゃん」
カッと頬を染め、目を開けた時雨は言い返した。

「ち、千鷹がそんな風にしたっ」
「そうだよ?」
くすくす笑って肯定する千鷹の背中を叩く。

「お前、可愛いからな」
うなじにキスをされる。

「ほら、ズボン脱げ。それとも脱がして欲しいか?」
「甘やかすって言った」
「言ったな」
千鷹の手がズボンに掛かりトランクスごと下ろしていく。

「足、抜け」
足首まで下ろされたズボンを抜くと、風呂の戸を開け、千鷹は時雨の手を取った。

そのまま2人でザブンとお湯に浸かった。

「千鷹」
お湯の中で千鷹の手を握る。引き寄せられてキスされた。

千鷹の舌が時雨の舌が絡まる。

「ん……」
それだけで時雨の中心は疼いた。

繋いだ手の反対の手でその中心を扱かれ、お湯の中に放ってしまった。

「あっ」
後孔にあてがわれた千鷹のモノ。けれど、あてがわれたまま千鷹は動かない。

「イれてっ、早くっ。千鷹が欲しい」

千鷹が欲しい。
おねだりが口からポロリと出た。いつもなら言わされる言葉。

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