月と太陽 | ナノ


▼ 5.時の彼方

「ネオン?」
夜中、エイゼンは目を覚ました。

傍らに眠るネオン。

自分の部屋だった。


ネオンのこめかみにキスをしてエイゼンはベッドから出た。

部屋の窓を開ける。

「エイゼン?」
「ここだ」
目を覚ましたネオンは立ち上がってエイゼンの元へやってきた。

ぎゅっと抱きついてくる。

「戦は?」
「正午にリーナカンジャがアガサを攻めて、落とした」
「そうか」
エイゼンは無表情に頷いた。

「あの教会は?」
「え?」
「見ただろう。教会があったのを」
「ああ」
「焼けたのか?」
「詳しい報告はまだ受けていない。あの教会がどうかしたのか?」
「あれは教会に見えるが教会じゃないぞ」
「そうなの? じゃあ何?」
「あそこは、病院……いや、研究所に近いな」
「研究所?」
「まぁいいさ。なんでも。ネオン、ちょっと付き合え」


エイゼンの部屋を出て、スグイの森へやってくる。

「夢を見た」
夜空を見上げて月を恋(コ)うエイゼン。
「小さなネオンがこの木に登りたいと言ったんだ」
側にあった大きな木をエイゼンが叩いた。

「この木は、スグイの町外れにある、崖の上にあった」
「崖の上……」
「俺らはそこを遊び場にしていた。木に登って足を滑らせて、木から落ち、そのまま崖に。幸い、ネオンにケガはなく……。俺は後でなぜそこへネオンを連れて行ったのかと父に叱られた。そんな夢を見た」
「僕とエイゼンは昔あったことがあるのか?」
「言ったろ、今。夢の話だと」
「でも……」
「実際、夢の話のような事はあったけれど、ネオンお前じゃない」
「どうして」
「その崖はスグイにある。そして俺とお前とどうやって知り合う。どうやって2人で崖から落ちる?」
「え、それは……」
ネオンが口籠もる。

昔からスグイとリーナカンジャは戦争こそないものの国同士の諍いは頻繁にあった。

それがとうとう戦争という形になったのは今日の話。
日付が変わったので昨日の事というのが正しい。

「俺の父は軍人だった。だから俺とお前が出会うなんて無理な話だ」
「そうか……。でも実際あったんだろ」
「ああ。8歳の時に。まぁ俺もあの時の事は曖昧な記憶しかないんだよな。なんでそんな夢を見たのかよくわからない」
「……」

エイゼンかもしれないと、漠然とネオンは思った。

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