月と太陽 | ナノ


▼ 4.エイゼンの行方4

クナイの案内に付いて行く。

「クナイ……」
「ええ、ここは国王様がお客様を迎えるお部屋です」
「ここにエイゼンが?」
「ネオン様は知っていましたか? ここの奥に隠し通路がある事」
「ああ、もちろん」
「その奥に騎士殿がいらっしゃいます」
「……」

この部屋の地下、今は使われていない、奴隷売買が行われていた部屋。
この部屋はその奴隷を買いに来た近隣諸国の者が泊まる部屋だった。

「なぜここに」
「地下牢の環境は劣悪ですし、騎士殿の顔は庶民にもお披露目されてますから」
その部屋は鍵は掛かっていなかった。
部屋の隠し扉から地下へ降りる。

見張りもいない。
逃げたら逃げたでいいって事か。
ネオンは唇を噛み締める。

エイゼンは騎士だ。決してネオンの傍から離れはしない。

エイゼンのいる部屋ですら鍵は掛かっていなかった。

扉を開けると部屋の隅にエイゼンが座っていた。
「エイゼン!」

エイゼンはぴくりとも動かなかった。
「今、仲間を呼びに行ってます」
エイゼンの側に1人の若者がいた。
クナイの部下だろうか。


「エイゼンの様子は?」
「意識が朦朧としてますね。薬でも飲まされたんでしょか」

「エイゼン!」
軽く頬を叩く。
「僕だ、ネオンだ」
エイゼンはうっすら目を開けた。

「……ああ、無事だったか。怪我ないか、坊っちゃん」
「エイゼン?」
「先程からネオン坊っちゃんは無事かと、私に」
クナイの部下が言う。

「騎士殿はネオン様の幼少の頃を知っているのではないかと思いましたが。崖から落ちて、運ばれたが無事だろうかと」
「崖?」
「ええ、自分は擦り傷程度で済んだと。唯一深かった傷が額の傷だったとおっしゃって。最初は薬で朦朧としてるからだと思っていたのですが。あるんです、額に切り傷が」

クナイがそっとエイゼンの前髪を上げた。
「ありますよ、ネオン様」
「僕がエイゼンに会っていた?」
この傷を見てエイゼンをいとおしいと思ったのは、エイゼンが助けたから?

いや、エイゼンがネオンを助けたとは言いきれない。
だが、会っていた?

「ネオン様は覚えてらっしゃらない? 崖から落ちたなら何か覚えているはずです」
「崖から落ちたのは、なんとなく覚えている。まだ5歳になってなかったと思う。でも周りに誰がいたかとなるとよく覚えてないんだ」


その時、何人かの仲間がやってきた。

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