最強男 | ナノ


▼ 7

思わず嫉妬しそうになるくらい、互いを想いやっているようにみえる時がある。

夫婦。そういう形があるせいか、千里と珠希が一緒になって長いせいか。

形が欲しいわけじゃない。珠希が羨ましいわけでもない。
きっと千里の傍に珠希がいた長さの分、信頼しあっている2人が羨ましいのかもしれない。


「千里、俺“日立”になるよ」
強くなって、1番のパートナーになればいい。信頼なんて、相手を信じて行動していれば自(オノズ)ずとついてくる。

新たな仁の決意を察したのか千里は黙って頷いた。


「さて、俺は部屋に戻るが仁はどうする」
「え? 千里、仕事は?」
「ない。今日はもう屋敷にいる」
「ん、そうか。じゃあ、時雨さんに稽古つけて貰って、夜は千里といたい。最近ちっとも千里とゆっくり話すなんてないから」
「じゃあ、稽古休むか。朝の稽古はしたんだろ?」
「うん。けど、俺……早く“日立”になりたいから」
「時雨さんは稽古熱心な生徒を持ったな。行ってこい」


仁が“日立”になるのは半年先か1年先か、案外もっと早いかもしれない。

日立一族が“日立”になるために稽古を始めるのは6歳から。
大体18歳迄に稽古を終え、“日立”になる。が、日立の者は毎日稽古をするわけではない。
思春期には急激に身体を動かすと身長が伸びなくなる。それを考慮し、稽古は週1のペースになる。

寮暮らしの日立の者はこのペースだ。

18歳になれば一人前とみなされる。

仁の場合は成人しているので、課題をこなすのみ。なので、毎日稽古が入る。

「いってくる」
千里に声を掛け、部屋を出た。


時雨を捜す。時雨はすぐに見つかった。縁側に座って日本庭園を眺めていた。

「時雨さん」
「仁か」
庭園から仁に視線が移る。

「稽古つけて下さい」
「座れ」
時雨がぽんと自分の隣を叩く。仁は横に座った。

「よく千鷹とこうして縁側に座って話をした。千里と話すとそれを思い出すよ」
「それは、千里が千鷹さんと似ているから?」
「そうだな、性格はそっくりだから、喋っていると千鷹と話していると錯覚する時がある」
「俺が今見ている千里は時雨さんから見て、千里らしいですか?」
「仁といる千里っていう意味かな、それは」
「はい」
んー、と時雨は頭をかいた。

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