最強男 | ナノ


▼ 6

「千里、俺と出会って後悔してない?」
「なぜ? する必要ないだろう?」
すいと千里の唇が降りてくる。仁は素直にそれを受けとめた。

「……俺と千里、どうやって知り合ったの?」
「お前が公園にいたんだ」
「どこの?」
「事務所の前の公園だ。雨が降ってたな。千草と事務所から出て、ふと公園を見た」
「見て?」
見上げたまま仁は少し首をかしげる。

「雨の中、傘もささずにつったってる奴がいるとね。つい気になった」
「それが俺?」
「ああ。お前だと気付いて持って帰った。夜遅かったからな、別宅のほうに泊まった。珠希が微笑んだ。子供流してから笑わなかった珠希が」
仁は珠希にとっても、特別なんだと千里は小さな声で囁いた。

「千里、珠希さんとキスしたことある?」
「ま、夫婦だからな」
「ん。俺もあるよ」
見つめる瞳がいたずらっ子のように輝く。

「……珠希さんとはね、一心同体なんだ」
顔を上げたままの仁はそろりと千里の首に手をまわす。
自分のほうに引っ張ると、再びキスした。

「一心同体?」
「うん。千里はわかんなくていいよ。珠希さん、千里の子、生んでくれないかな。俺、すっごい可愛がるのになぁ」
「仁」
「珠希さんならいいよ。俺と珠希さん以外の奴抱くっていうなら、許せないけど」
「俺には仁がいる。仁がいなけりゃ珠希を抱けた。でももう抱けない」
「千里って、ほんとに俺の事好きだよね。嬉しいけど、珠希さんも見てあげて」
「お前、知ってるのか。珠希が俺の事を想ってる事」
「知ってるよ。っていうか千里、知ってたの。珠希さんの気持ち」
くるりと向き直り千里と目を合わせる。

「ああ」
「そうかー。千里、子供を抱かせてあげたいと思ったのは嘘じゃないよね?」
「もちろんだ」
「なら、いい。言ってあげればいいのに」
「仁。俺は珠希を愛してるわけじゃない」
口をつぐんだ仁の頭をぽんぽん叩き立ち上がった。

「子供の事は考えておく」
「千里」
「何だ」
千里の瞳がやさしく見下ろしてくる。
仁は千里に手を伸ばした。

「知ってた? 千里、珠希さんを見る目、すごくやさしいんだよ」
立たせてくれた千里を見上げる。千里は、そうか?と首を傾げた。

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