最強男 | ナノ


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車のドアを開けるなり千歳が遼を見上げる。

「よう、ジュニア。元気か」
ささっと千歳は仁の後ろに隠れた。

「顔は千里そっくりやのに、性格は似てないんやな」
鼻で笑うと遼は手を伸ばして千歳の頭を撫でた。
戸惑う千歳が仁に助けを求めるような瞳を向けた。

「珠希さんの弟でね、千歳のおじさんに当たる人だよ」
「はじめましてやな、千歳」
遼は車から降り、仁の前に立つ。仁はそっと千歳を遼の前に立たせた。

「遼や。珠希からお前の話は聞いてる。仲ようしたってや」
「お母さんとおんなじ喋り方してる」
「そらそうや。姉弟やからな」
「ホントに?」
「当たり前やん。オレは嘘は言わへん」
珠希と同じ関西弁を話す遼に千歳は珠希の匂いを探る。

「……東雲千歳、5歳」
気を許せると思ったのか千歳は自己紹介した。

「相模遼、25歳」
ならって遼も返す。

「25?」
思わず仁は年を聞き返した。

「なんか文句あんのか」
目が細められ仁を見る。

「いや、もっと若いかと思った」
「そいつはどーも。おら、千歳。乗りな」
助手席を千歳に譲り遼は後部座席へ移った。


仁に対する態度は悪い。けれど遼は案外いい奴かもと仁は思った。



屋敷に帰れば時雨がいた。千歳を迎えに行っている間に来たようだ。
時雨が遼を呼ぶと遼は黙ってついて行った。

「何かあるの?」
「遼の“日立”になりたいって奴が日立にいてな。会わせようと遼を呼び出しても来ない。だから前に弾を大阪に飛ばして引っ張って来る予定だった」
「もしかして、佳乃さんが襲われる前? 弾が大阪に行くって言うの聞いた」
「それだ。結局行けずに、今になった」
「ふうん。ね、日立の人達って、全員、“日立”になる稽古ってするの?」
「基本は全員だな。男も女も関係ない。日立は、大概、東雲一族の誰かにつくが、今回のように日立が、東雲以外の奴につきたいという場合もある」
「今、稽古してるの、俺だけ?」
「いや、何人かいるが、稽古は1対1だ」
「そうなんだ。俺、“日立”になろうとしてるのに、“日立”の事、なんにも知らないなぁ」
「時雨さんに聞くといい。夜、稽古だ」
「あ、うん」
千里座るソファーの肘掛けに座って仁は千里が手にした煙草を奪い取る。

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