最強男 | ナノ


▼ 2

「遼(ハルカ)」
遼は珠希の手を自分に引き寄せると手の甲にキスする。

「お迎えに上がりました、姫」
「じゃあ、仁、帰るわ」
頷けば珠希は仁の手を引いた。

「そこまで見送って」
いいよ、と立ち上がる。

遼が眉間に皺を寄せたのが見えた。


「……誰?」
こそりと弾に聞けば、相模遼と返ってくる。
いや、そういうことじゃなくと思う。

珠希達とどういう関係者なのかを聞きたかったのだ。

「相模組若頭だよ」
弾が続けて言った。

「相模組?」
「うちの実家や。弟。よろしくしたって」
「はぁ……」
きっと仁を睨み、視線を外さない遼。こっちがたじろいでしまう。

「で、何しにきたん? 遼」
「珠希を迎えに」
「ちゃう。そうじゃなくて、仕事でこっち来たん?」
「あー、呼ばれたんや。時雨さんに」
「時雨さんに? ふーん。そや、千里に挨拶したん?」
「ああ。相変らず、ヤなヤローや」
「ほんま、遼は千里嫌いやな」
「珠希をとる奴はすかん」
「シスコン……」
弾が小さく呟いたのを仁は聞いた。珠希と遼は聞こえなかったのか先に進む。

遼が仁を睨んだわけを朧気に掴む。姉と仲良くする仁にむっとしたのだろう。



玄関先で千里が待っていた。

「遼。時雨さんから連絡だ。こっちに来る。お前は残れ」
珠希と一緒に別宅に帰りたいとありありとわかる顔で遼が舌打ちする。

車のほうへ歩いていく弾の後を追いかけるようについていく珠希。
珠希が振り返った。

「仁。またね」
手を振る珠希に手を振り返す。

「千里。仁、泣かしたり、つらい思いさしたら、うちが許さへんからね」
そう言って車に乗った。

車が見えなくなるまで見送って、千里を振り返る。

「千歳のお迎え、行ってくる」
「仁。今日は寄り道するな」
「わかった」
頷いて車に乗り、エンジンをかける。

「オレも行く」
助手席に遼が乗ってくる。仁がいいの?と千里を見た。

「まだ少し時間がある。行ってこい」


車の中の沈黙を破ったのは遼だった。
「あんた、珠希の何?」
「友達」
「友達、ね。一応あいつ千里と結婚してんの知ってる?」
「知ってるよ」
「知っててキスするんや?」
「……珠希さんは、千里の事が好きなんだ。俺じゃない」
「千里と珠希の結婚は東雲が相模組を傘下につけるための政略結婚や」
「そうだったとしてもだよ。珠希さんとのキスは親愛のキスだよ。それ以上でもそれ以下でもない。恋愛感情はお互いないよ」
「どうだか」
遼がふっと息を吐き出した。

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