最強男 | ナノ


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数日前、東雲組の事務所が建った。
千明の血の跡を残す事務所を建て替えし、新しい事務所が出来た。

日立くふりと千明が本宅を出て、事務所の住居部分に引っ越した。



「かっ……」
にぃ、と珠希は笑みを浮かべる。

「かっこええやろ」
こくこく頷くと珠希は言った。

「この写真、全部仁にあげる」
「え、でも珠希さんの秘蔵写真だろ」
「ネガあるし、うちが一枚しか現像してないと思う?」
前に言っていた千里の秘蔵写真を珠希に見せて貰っていた。

「別宅に帰ればまだあるし。それもあげる」
「ありがとう」
「仁」
顔を上げれば目の前に珠希が仁を覗くようにして見ていた。

「近いよ、珠希さん」
「仁……」
そっと珠希の唇が仁の唇へ落ちる。甘い味がした。


「おすそわけ、してな。千里のキス」
再び重なるキスに目を閉じる。
珠希のキスは気持ちがいい。

唇から離れていく感触に目を開ける。

「ごち」
微笑む珠希に今度は仁からキスした。

「ん……」
鼻にかかった珠希の声。

「俺からのキスは、いらない?」
「も、貰ってるやん」
「だね」
そうやって笑い合う。


「好きやで」
「俺も」
そこに性的なものは何もない。恋愛感情もない。あるのは互いに千里を想う気持ちだけ。
仁と珠希は千里を想う同志なのだ。

ただ、互いに互いを気に入っているという意味で好きという感情はある。

「あ、そうだ。珠希さん。見てみて」
仁は携帯電話を取り出して珠希にかざす。

「いやー、なにこれ。むっちゃええやん。欲しいー」
野良猫を両手で抱き、猫にキスする千里。
の携帯画像。

「珠希さん、メルアド教えてよ」
「ええよ」
赤外線通信で電話番号とメールアドレスを交換し、先程の画像を送る。

珠希の携帯が着信の音をたてる。

「来た」
珠希がうれしそうにメールを開いた。


「へー、よく撮れてるじゃん」
後ろから弾の声。はじけるように後ろを振り返った。

「2人して見るなよ」
身体を反らして言う弾に珠希は、何しに来たんと聞く。

「別宅帰るんだろ」
「え、もうそんな時間なん?」
千明がいなければ、弾と珠希がいる必要もない。


「弾。珠希、いたか?」
聞きなれない声がして、声のしたほうを見れば、髪を金に染めた青年が立っていた。

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