最強男 | ナノ


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「仁、もう少ししたら、泰介を家まで送ってやれ」
「あ、うん」
千里に言われて頷く。

「千里、圭介どうなったわけ?」
弾が聞いた。

「まだ決まってない」
「ふーん。どうなりそ?」
「多分、楓の下に付く事になるだろうな」
「楓の? えらくまた違うトコに」
「楓さん?」
知らない名につい弾に聞いた。

「潤島(ウルシマ)楓。東雲と日立と新居の間の連絡係だな」
「ふうん」
「お前、会ったことあるはずだぞ」
千里に言われて首をかしげる。

「え? いつ?」
潤島楓なる人物に仁は心当たりはなかった。

「本宅に来てるだろ」
「ええっ」
首を傾げて思い出してみる。

本宅には千里と仁。千草。千歳。渚。それに千明と日立。出入りする数名のヤクザ。それから……。

「……あ」
いつも部屋の片隅に青年がいた。
違和感なく溶け込んでいたので思いつかなかった。

「楓も人が欲しいと言ってたからなー」
弾がぼやいた。

次の日、圭介は楓の下で働く事になった。


日立探偵事務所で黒田が暇そうにテレビを見ていた。

電話をかけたり、掛かってきたり、何かと忙しく働いていた圭介を見ていた為に、仁はそのギャップに戸惑っていた。

「あの、黒田さん」
返事はない。視線だけが動く。

「仕事、しないんですか?」
くっと口の端を上げて黒田は視線をテレビへ戻す。

「弾がそろそろ戻ってくる。そうしたら弾と出掛ければいいよ」
「……はぁ」
する事がなくため息が出る。

昨日、泰介を家まで送れば、泰介は圭介と同居していた。

圭介はまだ家にはいなかったが、名前が連名になっていた事に仁は気付いた。

仲がいいんだなと思った。


弾も黒田と同居しているようだが、この2人は相性が合っているのかよくわからない。
仁からすると疑問だった。

黒田壱臣。一体この人は何者なのだろう。仁は黒田がよくわからなかった。


それを、事務所に来て仁を連れて再び外に出た弾に聞いてみた。

「黒田は元々別の組にいた奴でさ、見かけたおれを気に入って東雲組に入った奴なんだよな」
「へぇ……」
「で、家まで押しかけて来がった」
「別の組って?」
「蓮沼組って聞いたことね?」
「ないなぁ」
「ま、小さい組だしな。そこの組長の付き人やってたらしいわ」
「それ、いつの話?」
「うちに来たのが、おれの中3の時だから、あいつが17か18の時だな。付き人はそれ以前だな」
一体いつ、黒田に会ったのか、ますますわからない。

「弾、黒田さんて怖くない?」
「いや?」
「俺は怖い」
「黒田が?」
「理由はわからないけど、そう感じる」
歩(ホ)が止まる。それにならうように仁も足を止めた。

「お前、千里が怖いか?」
「千里? 怖くないよ」
「オレは、千里を怖いと思ったこと何度もある。千里は怖い。その内、仁にもわかるさ」
再び歩き出した弾について歩く。

「……弾、どこ行くんだ?」
「とりあえず東雲組のシマ教えとくわ。車で回ろうぜ」
停めてあった車を見て、弾が舌打ちした。

「直射日光もろだ。日除け忘れてた」
車のドアを開ければむっとした熱気が襲ってきた。

エンジンをかければクーラーが働き出す。

「仁、窓開けろ。クーラーきくまで開けてろ」
「はー、まだまだ暑いよな」
「早いとこ秋になれば涼しくなるのに」
「秋になったら、紅葉見に行こう、弾」
「紅葉? 見に行ってどうすんだよ。やだよ」
「厚、誘うけど?」
「行く」
ころりと意見をかえ、弾はアクセルを踏んだ。

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