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聖望学院、青山にある、やはりここも名門男子校で聖城学院と姉妹校にあたる。
「仁はどこよ」
「県立鎌倉高校」
「百武って奴、知ってるか?」
「百武? 百武智樹?」
「ああ」
「知ってる。厚も何度か智樹と会ってる。弾、なんで智樹を知ってるの」
「幼馴染みだ」
「そうなの? そうか、ダンって弾の事だったのか……。話、聞いてた」
「おれも。今わかった。お前、ジンジロか?」
「……そのあだ名、千里の前で呼ぶなよ」
「なんで」
不思議そうな弾の顔。
「ヤだから」
「理由にならないな、それ。ま、ヤなら? 呼ばねーよ」
「ふざけたあだ名じゃん。ふざけて智樹が付けたんだけどさ」
「……あいつに、ジンジロに会わせろって言った事があった」
弾は煙草を取り出し口にくわえた。
「断られた。バイトが忙しいらしいってな」
「あー、バイト漬けだったからなぁ。早く家、出たくて。そういえばダンに会ってみるかって言われた気がする。あの時会ってたら、どうなってたかな」
さぁなぁ、と弾は煙草の煙を吐き出した。
「ま、仁が千里と逢うのは確実に早くなってただろうよ」
「そだね」
仁の顔に笑みが浮かぶ。
「あーあ、ほんとお前、千里の事、好きなのな」
仁の笑みを見て弾は息を吐く。
「ん。大好きだよ」
素直にそう口にする仁。
「千里はお前の素直でピュアなとこがいいのかね」
肩をすくめて弾が言った。
「いつまで弾と喋ってるんだ」
扉が開いてむっとした千明が入ってくる。
「仁、弾と喋るなよ。仁はオレのダチだろ」
弾が溜息をついた。
「関係ないだろ。なぁ、仁」
きっ、と千明が弾を睨むが弾はそれをかわす。
「知らないよ」
肩を落として答える。仁の答えは弾も千明も聞いていなかった。
お互いがお互いを睨み、火花を散らしていた。
あーあ、とその様子を見ていたが言葉も発しない2人に背を向けた。
ほっとこう、と。
そっと部屋から出た。
「千明って、弾に構ってほしいんや」
珠希が様子見がてら立っていた。
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