最強男 | ナノ


▼ 13

「千明」
「ん?」
「今日、千里が本宅の前で何者かに撃たれた」
「……そう」
ベッドの上から仁を見る千明の瞳は、小さな曇りさえないように見えた。

「俺、千里が好きだよ。だから、もし千里が死んだら……、俺は千明を恨むよ」
「待って待って。何の話? 千里兄が死んだらなんでオレ恨まれなきゃならないの」
「千明が犯人じゃなければ、頭下げて謝る。でも……、千明なんだろ?」

千明の顔が変わった気がした。

「もう一回言うよ。俺は千里が好きだよ」
「……厚、は?」
「厚の片想いだよ。俺は厚の想いには答えられない。厚もそれは知ってる。でも厚は今でも大事な友達だよ」
「友達……」
「千明ともずっと友達いたいよ、俺。だから、千里を殺さないで」
「仁」

仁は笑顔で言った。
「早く退院して元気になって。チィが寂しがってるから」
病室を出ると弾と厚也がいた。

しっ。
弾が唇に手をやる。
裏口から出てから口を開いた。

「来てたのか」
「まさか仁が千明のトコに行くとは思わなかった。な、厚」
「ああ」
「……つけて来たのか?」
2人は顔を見合せ頷いた。

「どこ行くのか心配だったし、何かあれば助けられるトコにいたほうがいいと思ってな」
「……千里のトコ戻る。弾は厚也を送っていけば? つけて来たなら車はまだ向こうなんだろ」
「ああ。そうだな」

そこで二手に別れる。
仁は振り返った。

「弾、厚。ありがとな」
弾が背を振り向くことなく手を振った。
厚也はこっちを振り返って笑った。


仁は千里のいる横浜の病院に戻ると珠希がかけてきた。

「千里は?」
「手術は無事終わったわ」
「良かった」
ほっと息をつく。

「けどな、銃弾があらへんねん」
「え?」
「撃たれたはずやん? けど、なかったんやって。医者が不思議がってはった」
「珠希さん。信じますか? その銃弾、千里が俺に握らせたんだ」
「……信じる。そっか、それで仁はやらなきゃいけない事が出来た、言うたんやな」
「うん」
「仁。うちな、仁に言う事あんねん」
「何ですか?」

椅子に座って話しだす。

「うちと千里って、早い話、政略結婚やねん。でもな、うち、千里が好きで嫁いだんや」
「珠希さん……」
「千里はほんまにうちの事姉みたいに想ってる。けど、ちゃうねん、うちは」
「……ごめんなさい」
「何謝ってるん。アホやな」
珠希は仁に寄り掛かる。


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