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「ありがと」
呟いて、弾と厚也をを交互に見て、調べてと頼んだ。
「弾でも、厚也でも調べるアテはあるだろ。お願いします、調べて欲しい」
「まいったな……」
ぽつりと厚也が呟く。
「東雲の組長が好きか、仁」
その厚也の質問にはっきり仁は答えた。
「うん、好きだ」
「そっか。おれも仁が好きだよ。……片想いでもね。……調べてやるよ。知り合いに鑑識やってた奴がいる」
「ありがとう、厚」
礼を言う仁に厚也ははにかんだ笑みを見せた。
「千明さ、これが千明の仕業だとして、なんで千里を狙うんだ? 言い方悪いがいつも厚の恋人を狙い、仁の恋人には手を出してない。けど今回千里だ」
厚也の瞳を自分に向けさせたく弾は口を開いた。
「今、おれに恋人はいない。で、東雲の組長は仁に長年片想いしてた人だ。焦ったんじゃないか」
厚也が弾を見る。
「仁と厚也をくっつける為とはいえ、義兄を狙うか」
弾の溜息に厚也が顔を上げる。
「お前、何で……」
「何で知ってるか? 蛇の道は蛇ってね」
「……」
仁はそっと部屋を出た。
出た事に、いつも仁を見ている厚也に気付かれなかった。
これは、と思う。
少なからず、弾を意識してる?
でなきゃとっくに厚也は仁がいない事に気付いてる。
車のある場所迄来て鍵は弾が持っている事に気付く。
軽く舌打ちして駅に向かった。
駅まで数分。仁は東雲の屋敷に来てから電車に乗るのは初めてだ。
いつも移動は車。
新宿迄出て、乗り換える。
すっかり車の移動に慣れてしまった仁はげんなりする。
ラッシュ時間帯に嫌気がさす。
都内の病院の最寄り駅で降りる。
千明の入院先の病院迄タクシーを飛ばした。
見舞いの時間は終わっている。
仁は裏口から入り、エレベーターに乗る。看護師に見つからないようナースステーションを通り千明の部屋へ行った。
扉を開けると千明はテレビを見ていた。
「仁!」
仁の顔を見るとすぐにテレビを消し笑顔を向けた。
「よう」
「暇だったんだ。今日は日立、来なくてさ」
「ふうん」
扉の前から動かない仁に座れよ、と側にある椅子に視線を向ける千明。
仁は顔を横に振った。
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