最強男 | ナノ


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「どこへ行く?」
車のキーを取り出した弾が仁を見る。

「まず、厚のとこ」
その名が出てくるとは思ってなかった弾が驚いたような顔をした。

「なんで厚?」
「さぁ。自分でもよくわからない。でも、厚の所に行けって言ってる」
「誰が」
「俺が。俺の勘かな?」
「……。その勘、信じてみよう。犯人探すんだろ」
「ん」
「行こう」

2人は病院を一歩踏み出した。



数時間後、青山のマンションに仁と弾がいた。

「入れば」
厚也が電気を点けた。

出勤していた厚也を無理言って早退させ、ここにいる。

「で? 重大な話って何?」
ソファーの背に軽く座り、厚也は切り出した。

「仁」
弾は仁に目配せする。そうして自分は厚也の向かいのソファーに腰掛けた。

「千里さんが撃たれた」
ポケットに入れた銃弾をソファーテーブルの上に置いた。

「仁、これ……」
銃弾を見つめる弾に頷いた。

「千里が撃たれた時の弾だよ」
「なんで仁が持ってる?」
「千里が渡してくれた」
信じないだろうな、と弾を見たが疑う様子はなかった。

「……仁、お前、犯人わかっててオレのトコ来たのか?」
「犯人なんてわかるわけないだろ」
「この銃弾と同じもの、オレ持ってる」
厚也はリビングを出る。何かを持って帰ってきた。

ことりと置かれた物。
同じタイプの銃弾。仁が持ってきた物と同じく薬莢がない。

「厚のは?」
「殺された恋人の身体から出てきた。この時の恋人は男だ」
「殺された恋人……」
口の中で反芻する。

「千明……?」
「決めかかるのは良くないけどな。調べればわかる。同じ銃から発射されたものなのか」
「……調べたほうがいいのか?」
答えは返らない。

仁の行動によって、千里の生死が変わる。
そう言った、千咲。

「千里がこれを仁に渡したなら調べろって事じゃね?」
弾が言う。

千咲の言葉に判断が鈍る。

「仁、自分が正しいと思う事をやれ」
2人同時に同じ事を言われ、笑った。

「千里はあんなんで死ぬような柔な男じゃねーよ」
「……弾?」
「知ってる。だからこそ仁が正しいと思う事をやれ」
「……」
頷いた。

弾は知ってる。千咲と何があったか。

「仁、まず自分を信じろ」
励ます厚也に笑顔を返した。

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