最強男 | ナノ


▼ 11

そこに厚也がいた。
高校生の時よりも精悍な顔つきをして立っていた。

「厚」
「久しぶり、仁」
厚也は断りを入れ、若宮の隣に座った。

「何かあったら呼べ」
奥の部屋に若宮が消える。


「ホスト、やってるのか」
「うん」
「意外だ」
「そうか?」

煙草を唇に乗せジッポに火を点ける。

「仁は何を聞きたい?」
ふぅっと紫煙を撒き散らし仁の瞳を覗き込む。

煙草を取り上げ、仁は自分の唇に煙草をくわえた。

「煙草、持ってきてないのか」
「煙草やめようかと思ってさ。けど目の前でうまそうに吸われると吸いたくなるだろ」
「お前は煙草やめられないだろ。側に煙草吸う奴がいるんだ」
「……誰だよ、それ」
「東雲千里。……本題にいこうか、仁」
「ああ」
頷くと厚也が立ち上がる。

「千明、やったの、厚?」
「それ聞く前に聞かせろ。なんでヤクザになった。しかも東雲の、だ」
「千里さんに拾われたから。ヤクザになったのは千里さんにスカウトっていうか……されたから」
「ふうん」
気のない返事が返る。

「千明が言わなかったか? おれは恨んでる。いや、憎んでるって言ったほうがしっくりくるな」
「なんで?」
「なんで、か……」

仁の吸う煙草を奪い返し、厚也は紫煙を上らせる。

「お前は信じるか? あいつはおれの恋人を殺した」
「え……」
「腹には子供がいた」
「千明が殺した?」
「半年前だ」
「……」

「高校の時、偶然再会した。丁度お前とは疎遠になりつつあった頃だ。最初は事故だと。けどおれが恋人を作る度、恋人は数ヶ月後死んでいく。千明が関わってる事に気付いたのは二十歳になる前だ」
「なんで……」
「知らねぇ。理由なんか聞きたくもない。……いや、薄々わかってる」

厚也の暗い顔に仁が立ち上がって手を伸ばす。
ぽんぽんと頭を叩く。

「このままだと警察に捕まる」
「かもな。けど、どっかで捕まっていいと思ってる」
「厚、そんな事言うな」
自嘲気味に厚也が笑った。

「ああ、そうだ。東雲弾ならうちにいる」
「やっぱりお前か」
「お前、来るの遅っせーからさ。意外とすんなり誘拐されてくれたよ」
「……お前ね」

厚也が仁の手に鍵を落とした。
ぼそっと住所を言う。

「そこに弾がいるんだな?」
「ああ。でも別に監禁してるわけじゃねーから、出て行こうと思えば帰れるはずだ」
わかった、そう言って厚也に背を向けた。

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