最強男 | ナノ


▼ 9

「タメ、ですか。……ええっ!?」
「そんな驚く事か」
「年上かと。……じゃあ、弾て呼んでも?」
「どうぞ」

「仁は弾が苦手ってわけじゃなさそうだな」
日立が可笑しそうに笑う。

「苦手? あーヤな感じとは最初会った時思ったけれど、苦手とかは……」
「お前、正直だな」
目を細めて弾は仁を見た。

しまった、と仁が顔をしかめる。

「そういや、表玄関のシェパード、ハナか?」
弾が思い出したかのように言った。

「チィの事忘れてた! 千里さん、帰ろうよ」
「そうだな、面会時間もそろそろ終わりだ。弾、千明に会うなら早く行け」
「あんまり行きたくはないけど、行くか」
弾が立ち上がる。

「またな、仁」
「あ、はい」
「そこは、うんだろ。タメ口でいけ、仁」
そう言うと日立とエレベーターフロアへ歩いて行った。


「なんで弾、行きたくないって?」
「千明が弾を避けてるからな。弾はそれがわかってるから自分から千明に会おうとはしない。……千明があまりいい顔しないのわかってるしな」
「避けてるってなんで?」
「千明は弾が苦手なんだよ」
「千明が? 千明って苦手な人っていたんだ」


仁の運転で屋敷に帰ると仁はすぐさま、千里のベッドに潜り込んだ。

「仁」
「疲れた。1時間でいいから寝せて」
朝から運転。警察署に行き、別宅へ寄り、病院に来た。

ちょっとお疲れ状態な仁。

「千歳と花火を観に行くんだろ、それまでに――」
振り返ればもう仁は寝息をたてていた。

仁のやわらかな髪に触れ、起こさないように部屋を出た。



仁が目を覚ました時、窓の外は暗くなっていた。
けっこう寝ていたんだなと時計を見れば、9時過ぎだった。

「うそ」
時計を見直して部屋をでた。

屋敷はしん、と静まりかえっていた。

キッチンに渚がいた。

「腹減った?」
「あ、うん。ね、千里さんと千草さんは?」
「千里組長は別宅の屋敷。千草さんは千歳と花火観に行った」
「花火。あっ」
千歳と一緒に行く約束をすっかり失念していた。

やれやれ、そんな顔で渚はシチューを仁の前に置いた。

「帰ってきたら謝らなきゃ」
「そうしろ」
「で、なんで千里さん、別宅に? 昼間も行ったのに」
「弾がいなくなった」
「え」
仁の手が止まる。

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