▼ 6
「はっ…あ……」
ぞくぞくと快感がはい上がってくる。
ゆるむ瞳を千里へ向けた。
「仁、そんな目で見るな。マジで喰うぞ」
「だ……って……」
追い上げられた身体はすぐには冷めない。
「いいのか、仁」
千里の指がさらに仁を追い上げていく。
「や、怖い……よ」
ふっと千里は笑った。
仁の唇にキスする。
「今日は勘弁してやるよ、けどもう待たないからな」
腕の中に仁を収めて耳元で囁いた。
小さく、本当に小さく仁は頷いた。
「……千里さん」
「ん?」
「…………トイレ行かせて?」
「なんだ、ティッシュならあるぞ」
「千里、さぁん」
泣きそうな仁の声に、腕の中から解放すると仁は一目散にトイレへと駆け込んで行った。
残された千里は1人笑いをこらえていた。
戻ってきた仁は顔を真っ赤にしてベッドに上がってくるとタオルケットを頭から被った。
「頭隠して尻隠さずになってるぞ、仁」
何を思ったのかタオルケットから顔を出した仁。
「……おやすみ」
律儀に顔を見て挨拶をする仁の額にキスを落とし、千里もおやすみと返した。
しばらくすると仁の寝息が聞こえてきた。
「ハナ、お前千明をあんなふうにした奴、見たよな?」
千明の名前にチィの耳がぴくりと動いた。
「千明の為に、協力しろ。……チィ」
元は警察犬のチィ。
きっとチィは千明に仁の元へ行くよう命令されたのだろう。でなければチィは千明を守る為に現場にいるはずだ。
けれど千明が仁の元へ行くよう言わなければ、千明は手術するような事もなかったかもしれない。
仁の寝顔がある。
その寝顔に誘われるかのように千里も眠りについた。
チィが2人を守るようにその夜一睡もしなかったのは、千里も仁も知らない。
千里の携帯の着信音で仁は目が覚めた。
千里は二言三言喋ると電話を切った。
「千明の手術、無事終わった。ICU(集中治療室)にいるそうだ」
「じゃあ……」
「まだ予断を許さない状況ではあるからまだなんとも言えないらしい」
「そっか。でも手術を乗り越えたっていうだけで、ちょっとうれしい」
千明は仁の親友でもあるのだ。
千里はぽんぽんと仁の頭を叩く。
「……朝飯食おう。千歳を起こして来い」
「うん」
「返事は、“はい”だろ。ほら、行って来い」
「はい」
返事を返して仁は部屋を出ていった。
prev / next
bookmark
(6/17)