最強男 | ナノ


▼ 5

「チィ、だろ? 仁だよ。お前、俺に知らせに来たんだよな?」
しゃがむとチィは仁を舐めた。そうして仁の服の裾を引っ張る。

「チィ、わかってるから。帰ろう」
チィの頭を撫でる。

「ハナ、車に乗れ」
千里が車のドアを開ける。
「チィ、乗って」
仁の言葉にチィは動いた。

「またな、岳」
「ああ」
岳はあっさり家に入って行った。

「何も聞かないんだな、あの弟」
「岳は昔っから興味ないものには関心がないから」
「ふうん? 高校生か?」
「うん。高3だったかな」
「仁より肝は据わってそうだ」
「どうせ俺は肝据わってないよ」
不貞腐れたように仁は横を向いた。

「そういうトコ、かわいいよな。仁は。あの弟じゃ見れない反応だろうな」
笑って千里は仁にキスした。

「こんなトコで!」
「誰も見てないさ」



車は本宅に向かう。
「明日は警察行って、帰りに病院に寄って帰るか?」
「うん。……今手術中かな?」
「たぶんな。まぁ日立が付いてる。何かあれば電話してくるだろ」
「ん」





その日、仁は眠れなかった。寝返りばかり打っていた。

「寝れないか?」
千里が声を掛けてくる。
「うん」

あの日、筋彫りした日から仁は千里の部屋で寝起きしていた。

仁の側を離れないチィも今千里の部屋のベッド脇にいた。

「あの血だらけの部屋がちらついて……」
「初めてだからな、お前」
「よくあるの? あんな事」
「何も考えるな、仁」
「そんな事言われても……」
「じゃあ、考えられなくしてやるよ」
にやりと千里の片頬が上がる。

「ちさ……」
名前を呼ぶ前に唇を塞がれる。千里の舌が仁の口腔を犯していく。

千里の手が仁の胸の突起を触る。仁の身体が震えた。

「仁は触る度に初めてみたいな反応をするよな」
「それって、ダメなの?」
「いいや、かわいい」
「かわいいって嬉しくないんだけど」

上に重なる千里を見上げる。
「自覚ないだけだろ、仁の場合」
「これでも高校の時、格好いいって女子からもてたんだからな」
「へえ? けど仁は意味をはき間違えてる。確かに見た目は格好いい部類に入るけどな、仁は反応が初々しいんだ。かわいく映る」
「よけい、嬉しくないよ、それ」

会話しながらも千里は仁を追い上げていった。
仁の呼吸が荒くなる。

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