最強男 | ナノ


▼ 4

「ハナの、いやチィの血統書の正式な名前を知ってるか」
「知らない」
千明から聞いた事はなかった。

「フラワークラウン」
「花冠だ」
「たぶん千明が死んだらチィを任せる。そう言いたかったのかもな。春休みなら東雲の家に来る直前だ。ヤクザの家に行くっていうのはわかってたはずだから、あいつなりの覚悟だったのかもな」
「覚悟……」

ヤクザの家だ。抗争に巻き込まれたりと一般より死に近くなる。

「いつかこういう事が起きたらって覚悟してた、そういう事?」
「多分な」
「千明……」

あの時、千明は何を思って東雲の家に行ったのだろう。
さよならの言葉さえなかった。

また会えると千明は思っていたのだろうか。

でも再会してすぐにこれはないだろう。


東雲組の事務所は警察が取り囲み、現場を調べていた。

千里の顔は警察に知られているのか事情を説明すると犬はいなかったとの返事だった。

「じゃあ、俺らが来た時すでにいなかった?」
「可能性はある」
「千明の危険を誰かに知らせようとしたのかも。千里さんとか、弾さんとか」
「ハナは誰にも懐かなかった。そんなハナが俺らの元に来るか?」
「来ないね」
「ハナは千明にしか……。待てよ、お前は?」
「え?」
「ハナに懐かれてたのか?」
「懐くっていうか、チィとはよく遊んだよ?」
「お前の所かもしれない。千明が言ったんだろ、『オレがいなくなったら花冠をあげる』って。それだけ千明はお前を信頼してたなら、ハナだってお前を友達だと思う。違うか?」
「でもチィは俺のトコには来てないじゃないか」
「バカ。千明と別れたのは小学校の頃だろ。その頃住んでいた家にハナは向かったのかもしれない」
「行かなきゃ……」



高校を卒業して大学生になり、それから実家に帰った事なんて、数える程度だった。
実家周辺は千明と遊んだ思い出に溢れている。

実家の前。
チィはいなかった。
「まだ来てない?」
「犬の足じゃ、まだだろう」
もうすっかり夜だった。

それから数時間。
「仁?」
人の気配に振り返る。
「岳……」
弟の岳(ガク)が立っていた。いつの間にか仁よりも背が高くなっていた。

「チィ!」
岳の後ろに犬がいた。
「仁知ってるの、この犬。さっきから付いて来るんだよな」

犬は仁の前にやってくるとフンフン匂いを嗅いだ。

prev / next
bookmark
(4/17)

[ back to top ]


×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -