最強男 | ナノ


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「なんだよ、これ……」
クリックすれば千里の画像のサムネイルが出てくる。

写っているのは自分。
千草や千早が写っていたりもするが、明らかに千里がメインだった。

数年前の千里と千草、千鷹と写っているのが最後。千鷹が無理やり撮ったからよく覚えていた。この写真を撮った次の日、千鷹は死んだ。まるで自分の死を知っていたかのように死を受け入れていた。

千鷹の死を千里は目の当たりにした。

千鷹は自分の死を知っていたのだろうと千里は後になって気付いた。

サムネイルが膨大な枚数があるのに気付かされる。

何のためにこんなものを千鷹は作ったのか。

「どうでもいい……」
ベッドに倒れ込めば眠気が襲う。5分もしないうちに千鷹はスーツのまま、朝、千草に起こされるまで夢の中だった。



千草に起こされたのは午前8時。

「千里、酷い顔してますね」
「そんな酷いか」
「寝不足の顔ですよ」
「3時間は寝た」
「……千里。貴方が寝不足でどうするんですか。もう少し寝て下さい。起こしにきますから」
「千草だって寝てないだろ」
「千里よりは寝ましたよ」
「なんかあったら起こせ」
「了解しました」
千草がパタンとドアを閉めた音を聞いてから意識が落ちていった。

ふっと目を開けた時、時計は午後2時過ぎを指していた。

「起こしにくるんじゃなかったのか……よ」
違和感を感じて横を見れば、スヤスヤ眠る千歳がいた。

千歳を撫でる。いつもなら千歳が入ってきた時点で気付いたはずだ。

「相当身体に負担来てるな……」
仁がいなくなってまだ2日。

春過ぎて仁と出会い、仁を拠り所にしていたか。

好きになった方が負け。
ホントにそうだと思う。千里のほうが仁に依存している。

「俺が見つけてやるよ、仁」
自分に誓う。

「起きたん?」
開いたドアの横に珠希がいた。歩いて来て千里の横に座った。

「朝、千歳が言うねん。お父さんは? お父さんはって。寂しくないようにお父さんといるって騒ぐの。だから、無理言って時雨さんに送って貰ってこっちに来たの。千歳、あまりだだこねる子やないのに」
「そうか……」
「親思いのいい子や」
「それ、父親思いだろ」
「親思いやで。うち、神流さんのとこ、行ってくるわ」
「なんかあったのか」
ちゃうちゃう、と珠希は手を振った。

「親思い言うたやろ。千歳、うちにもおって言うんよ。お父さんはきっとお母さんも必要だからって。僕もいて欲しいって。お母さんもお父さんといたいでしょって。別宅を空けるわけにいかないじゃない。神流に頼めないかなって。東雲はみんなはピリピリしてて頼める感じじゃないんよね」
「神流は無理だ。忙し過ぎる」
「千森さんは?」
「千森さんか。千森さんも駆けずり回ってるはずだ」
「うーん、じゃあ……。あ、千紘(チヒロ)さんがいるやん」
「紘さんか」

千紘というのは千里のおじにあたる人だ。千鷹の末の弟になる。

千鷹は3人兄弟の長男だ。次男が千森、三男が千紘。千紘は千鷹とは一回り以上年齢が離れていた。

千里にとってもう1人の兄のような存在だった。

「頼んでみるか」
「うち、千紘さんとこ行ってくる」
「ああ。……なぁ、珠希」
「何?」
「千歳は仁に似たな」
「そやね。ちょっとした仕草だとか仁に似た。それだけ、千歳は仁とおるんやなー」
「俺には似て欲しくない」
「そう? なんや気付いてへんの? 千歳、千里にも似てはるよ。親子やなって思うもん」
「本当の父親じゃないけどな」
「でも血は繋がってるやん、千歳と」
「まぁな」
珠希が聞いてくる。

「千里は、千歳をかわいいと思う? 血は繋がってても自分の子やないやん」
「思うさ」
「うん、そやね」
珠希はにこりと笑って頷いた。

「珠希」
「んー?」
「落ち着いたら……、作るか。子供」
「そやね。仁に名前考えてもらおっか」
「いいな」
ふふっと珠希が笑う。

「……あの子、又、うちんトコ来てくれるかな」
珠希の流れてしまった子供。千里と珠希の子。

「来るさ」
「そやね……。うち、仁、好きや。千里も仁の子も生みたい。なぁ、それ、あかんかな」
「仁がいいなら」
「うちら、変な関係。けどだからいいのかもしれへん。千里がゲイじゃなければ、うちら反対にギスギスした関係になってたかもしれへん」
「ははっ、そうかもな」
小さく笑った千里に珠希は微笑んだ。

「笑った。うち、千里の笑顔、好きやで」
ふふっと笑いかけて珠希は部屋を出て行った。

そこで気付いた。
仁がいなくなって笑ってないことに。

「ダメだな、俺」
千歳の寝顔を眺めながら、俺に力をくれと千歳の頭を撫でる。

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