最強男 | ナノ


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くすりと笑うと馬鹿にしたように厚也は千里を見る。

「仁がどこにいるか、わからないわけではないんでしょ」
その笑いに千里は不愉快な顔を向けながらも、まぁなと答えた。

「オレだって検討がつく。久遠寺組だ。弾の居場所を聞くあいつは日立探偵事務所にいた」
「その後は」
「仕事に出たので」
「帰ればわかるか? 嫌な予感がする。行くぞ」
厚也はうすうすわかっていた。今日はこれ以上仕事は出来ないと。連れ出される気はした。



「どうぞ」
その声に千里は部屋へ足を踏み入れる。
パソコンが3台。その1台に厚也は電源を入れた。

「座って下さい」
そばにあった椅子に千里が座る。

「仁に発信機がついてる。発信機といっても結構性能いいやつで声も拾える。まぁ、身体に埋め込んであるから聞き取りにくいけど」
「そんなものをいつ付けた」
「高校の時に」
パソコンが立ち上がりマウスを操作し、キーボードを叩く。

「……あれ」
「どうした」
「反応がない」
千里の眉間に皺が寄る。

「仁が弾の場所を聞いたときは日立探偵事務所にいた。それは確認してる。でも今は発信機が反応してない」
厚也の手がキーボードを更に叩く。

「トレースしてみる」
時間経過と仁の行動が映し出される。

仁が厚也に電話をかけ、その後厚也は折り返し仁に電話をかけた。

30分、仁に動きはない。そしてその場で反応は切れていた。

「どういう事だ?」
「わからない。考えられるのは発信機が取り出されて壊されたって事」
「壊れた。もしくは発信機の寿命の可能性は」
「なくもないけれど、このタイミングで? 消えかたがいきなりすぎる。……仁は誰かと一緒でした?」
「ああ。でも、そいつは弾のほうへ行ったから、その後は仁1人だ」

顔を見合わせ、千里と厚也は黙った。

「仁を1人にすべきじゃなかった」
「ああ、俺の落ち度だ」
千里はくっと唇を噛む。

ふっと千里の雰囲気が変わった気がした。
空気が硬くなる。
ぐっと重圧が増す。

千里が厚也を見る。びくりと背筋が震えた。

これが本来の東雲千里だと厚也は直感で思う。弾が千里は怖いと言った。それがわかった気がした。
今までの東雲千里と何かが違った。

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