最強男 | ナノ


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千里は身を翻す。部屋を出て行こうとしていた。

「待って下さい」
立ち止まった千里が厚也を見据える。

「昨日、仁の同級生が店に来たんです」
「仁の同級生?」
千里はぴくりと眉を上げる。

「そいつの名前、久遠寺って名前で。ありますよね、久遠寺組って」
「久遠寺が何しに来た」
「わからない。騒ぐわけでもなく、呑んでた。帰るとき名刺貰ったんだ。『仁と同じ高校なんだ。あんたをよく見かけたよ』って話しかけてきた」
「で?」
「何かあったら連絡してくれなんて言ってた」
「……」
厚也は千里に久遠寺克己の名刺を引き出しから出し千里に突き出した。

「何かって、この事だろ。この名刺は多分オレじゃなく、東雲さんになんだと思う。仁がいなくなった原因、久遠寺じゃないの? 昨日の今日で関係ないことないと思うし」
千里は名刺を受け取ると胸ポケットへ入れた。

「斎藤、蓮華はバックにどこのヤクザがついているか知ってるか」
「東雲組」
風俗やホストクラブ等、大抵バックにヤクザが付いている。

厚也の勤めるボーイズバー蓮華にもバックにヤクザが付いている事はオーナーに聞いたことがあった。それが東雲組と知ったのは弾に聞いたからだ。


久遠寺組は知っていたはずだ。蓮華が東雲組のシマだと。
東雲組のシマに久遠寺組が入る。仁は久遠寺組にいる。

戦争になるんじゃないかと厚也は思った。

そして厚也は東雲組に関わってしまっていた。千明を襲ったとき、こんなに東雲組に深入りするなど思っていなかった。


「斎藤。お前、弾から離れるな。絶対だ。明日昼過ぎ、弾と別宅に来い」
「わかった」
「身の安全は保証する」
「当然です」
厚也はきっぱり言い切った。

「……言うな。ま、お前に何かあれば仁に俺が攻められるからな。とりあえず、今日はこのまま家にいろ。弾がここに帰ってくるまで家から出るな」
「仕事は?」
「……今日のところは弾が斎藤の代わりをしてる。明日からは出ていい。ただし護衛は付くからな」
「わかりました」
「オーナーにも一応、話は通しておく」
「お任せします」
厚也はそれしか言えなかった。

言葉使いは変わらないが千里の重苦しい空気は変わらない。

千里が携帯電話でどこかへかけ、二言三言話すと電話を切った。

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