最強男 | ナノ


▼ 1

仁のおかげで弾の居場所はすぐに知れた。
そのおかげで遼達の場所も割れた。

のちに知る。これは、引っ掛けだったのだ。

彼らの目的はただ1つ。
仁、だった。



弾と千里は厚也の勤めるボーイズバーの前にいた。

入口で弾が東雲組の名を告げる。オーナーの部屋へ案内された。

「お久し振りですね」
オーナーが千里に笑いかける。

「斎藤厚也、いるだろ。出せ」
「何かしました? 彼」
「協力して欲しい事がある」
弾が口を挟む。

「厚也に? ……それは今じゃないといけないと?」
「ああ」
千里が返事をする。

「東雲組にはお世話になってますしね」
オーナーはそう言うと受話器を取った。フロアに繋がるのだろう。厚也に来るようにとフロア係に伝える。

「すぐ来ると思います。東雲組長、厚也を連れて行くなら彼置いていって下さい。厚也を連れて行かれるとけっこう痛いんです。彼、うちの稼ぎ頭の1人なので」
オーナーは弾を見ていた。

「冗談じゃない。オレ、ホストは嫌いだ」
「じゃ、貸せません」
ぴしゃりとオーナーは言い切る。

「東雲弾さん、これは取引です。確かにうちは東雲組にお世話になっている。でも厚也が今欠けると彼のお給料にも響いてくる。ひいては店の売上にも響く。つまり東雲組のみかじめも減りますよ?」
「……」
みかじめとして東雲が取るものは、上納金の事だ。
みかじめは月いくらと決まっている。

「弾。やってやれ。オーナーを敵に回すのは後が怖い」
横で千里が笑う。

「ホストを?」
「やれよ。せっかくホスト顔してるんだ」
「顔の事、言うな」
むすっとした顔で言い返す。


そこでドアがノックされた。厚也が来たのだ。オーナーがドアを開ける。

厚也は弾を見て無事帰ってきたのを知った。
『弾は厚にとって大事な奴になってる』
その通りだと厚也は弾の顔を見て思った。


「じゃ、行きましょうか。弾さん」
オーナーは弾を連れ出て行った。弾の顔は嫌々半分、だけれど複雑な顔をしていた。

「座れ、斎藤」
「弾はどこへ?」
向かいのソファーに座りながら弾が出て行った扉を横目で見た。

「後で弾に聞け。斎藤、仁がちょっと目を離した隙にいなくなった。お前なら仁の場所がわかると弾に聞いた」
「だから、ここへ?」
「捜させてはいる。今のところ情報という情報はない」
厚也はすっと目をすがめて千里を見た。

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