最強男 | ナノ


▼ 11

仁は雲雀を見つめる。

「雲雀さん、……誰?」
かすれた声が出た。

「思い出せよ。黒田とオレ。これ言えば思い出すかよ。“千里のせい。お前がオレらにヤられるのは千里のせいだ!!”」
頭の中で何かがスパークした。

「……あっ」



その低い声、見下したような冷たい瞳。
『千里のせい。お前がオレらにヤられるのは千里のせいだ!!』



「や、……嫌だ…」
なぜ、忘れてた?
頭の中にあの日の情景が広がる。

「やめ……っ」
「……思い出したか。暗示が効くとはなー」
かたかたと小刻みに身体が震える。
生理的な涙が溢れてくる。

「……あ」
「仁」
その声に、仁は悲鳴を上げた。

雲雀がぐっと体重を掛け仁に乗り上がり唇を重ねてくる。

「ふっ……んんっ!!」
「騒ぐなって言ったよな、あの時も。噛むなよ」
舌が入り込んでくる。
気持ち悪いと思った。小さく首を振る。

「抵抗するな。したらどうならか、わかってるな」
ひくっと喉が鳴る。
身体は覚えていた。あの強姦を。

無理やり2人の男に抑え込まれ、犯された。身体が悲鳴を上げ、それでも続けられた行為。最後はあまりよく覚えてていない。
ただでさえ、今の今まで忘れていた行為なのだ。

パタッと手をソファーに投げ出す。
「いい子だ」
雲雀が仁の髪をかき上げた。

あの時も。そう、髪をかき上げられた。
雲雀に。

「雲雀さんがいた……」
あの時、雲雀は赤茶けた髪の色とブラウンの瞳だった。

「……黒田さん、と」
だから、黒田が怖かったのだと納得する。黒田は変わっていない。髪の色も瞳の色も。

忘れていても、怖かったのは覚えていた。


「厚也……っ」
厚也が来てくれたのは記憶にある。

「助けてっ」
雲雀の下で仁はもがいた。力一杯、雲雀を突き飛ばし、ソファーから降り、玄関へ走る。が、すぐに雲雀に捕まった。

「嫌だ。離せっ」
「痛い目にあいたいか」
あの恐ろしいほどの痛みが身体を震わせる。
捕らわれた利き腕がぐっと引き寄せられ背中にねじ上げられた。

「うああっ!!」
「大人しくしてればましなのになぁ、仁。1人だからって甘くみたか? 克己に言われなかったか、抵抗するなってな」

そんな事言っていた気がするが思い出す恐怖を思うとそんな事構っていられない。
あの恐怖を知っていたら、そんな事言えない。振り払おうする。

「来るなっ、来るなっ」
雲雀が舌打ちし、仁の鳩尾に拳を入れた。

どのくらい気を失っていたのか。ゆっくり目を上げれば、そこに雲雀はいなかった。

起きあがろうとして手足がどこかにくくりつけられ動かないことに気付いた。しかも全裸だった。

「気が付いたか」
ドアの前に雲雀が立っていた。

「雲雀さんは、千里が嫌い?」
「ああ。大が付くほどな」
「……どうして?」
「どうして?」
くくっと口を上げて笑う。

「知る権利は仁にはある。でも、千里に聞けばいい。会えたらな」
「会えるよ」
仁は即答する。

「来れる訳ないけどな。そんなことどうでもいい」
ゆっくり歩いてくる。そして仁の上に覆い被さって来た。

「俺は克己ほど優しくないし、優しく扱うつもりもない」
「……っ」
乳首の突起を前歯ではみ、舐めると口を離し仁を見た。
そしてまた口に含むと思いっきり噛んだ。

「いっ……痛っ、痛いっ」
両腕が括られていなかったら雲雀を押し退けていただろう。

「やめてっ、雲雀さんっ」
「うるさい」
顔を上げた雲雀が眉を寄せ仁を睨む。

仁の片方の乳首は唾液に濡れ、血が滲んでいた。

「前にも言って、黙らせたんだったよな」
その時は、丸めたハンカチを口に入れられ、その上猿ぐつわをされたのだ。

「今日はいろんなおもちゃがある。ギャグボールって知ってる? ……大人しくしとけよ」
血が出ている乳首をぐっと雲雀の親指が潰した。

前も雲雀は乳首を噛んだ。雲雀は本当に再現するつもりかもしれないと、仁はぞっとした。

一方的な行為。ただ怖かっただけの痛い行為。もう二度とされたくない、行為。

「い、いやだ。したくない。……お願い、お願い……!!」
「何度……、千里にお願いしても、あいつは聞かなかったぜ?」
仁は泣きそうになった。

「そうだな、仁がオレの操り人形になるなら考えてもいい」
「操り、人形?」
「簡単に言えば命令は絶対だって事だ。操り人形は、俺が右手を上げさせたら、右手を上げる。逆らわないだろ」
「千里に不利になる事でも?」
「当然だ。仁の意志なんかいらない。オレの為に働くお前っていう入れ物があれいい」
「だから、人形……」
千里の顔が浮かぶ。

千里を裏切るなんて出来ないと思った。身体の傷はいつか癒える。心の傷もいつかは癒えるときが来るかもしれない。でも……。

「俺は千里を裏切りたくない」

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