最強男 | ナノ


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「千里!」
そこへ飛び込んで来たのは千草だった。千草は別宅へ行く事も多く、最近はあまり顔も見ない。

「……何、やってるんですか」
千里と朱里を見て千草は呆れた声を出した。

「まさか前言っていた、千里と朱里を仁さんが見分けられるかやってるんですか?」
少し前、千里達兄弟は千早の家に泊まった。その時出た、仁は千里と朱里を見分けられるのかというもの。

「で、千草。何だ」
左の千里が千草を見る。

「始まりました」
「そうか」
左の千里が右の千里に目配せすると右の千里は左の千里に近づいた。

並ぶと余計に違いがわからない。だが、双子とはいえ別個の人格を持つ。
似ていようがどこか違いはあるはずなのだ。


「わかった、かも」
千里の前へ歩いて行き、左の千里の腕に手を置いた。

「千里でしょ? 右にいるのがハチさんだ」
少しの間の後、朱里が、右にいた千里を演じた朱里が当たりと仁に答えた。

「なんでわかった?」
「千里は、目でもの言う事あるから」
「……確かに。目に力がありますよね。朱里にそれはないですし」
千草が感心したように言って朱里を見た。

「ない? マジ?」
「ないです。いえ、語弊がありますね。普通の人よりはありますよ。ただ千里程ではないですね」
「ふーん……。目力かぁ」
朱里が呟くように言う。

「でも、ハチさんはどうしてLを知ってたかが不思議」
「さっき千里に抱きついた時に知ったわ。何かと思った。ポケットがもそって、もそって! 動くんだぜ!? ま、半分こいつのおかげで癒された」
Lを掌に乗せ、Lを可愛がる朱里は笑顔を見せる。


仁はどうして朱里が泣いていたのか気になっていた。だが、聞くのは聞くのははばかられる。

「初瀬、帰って仕事だ。ちさっちゃん、こいつ借りてい?」
「仁に聞け」
「借りてい?」
仁を見る朱里の目は千里に似ている。

「いいよ」
「だって、L。ちょっとばかしオレにパワーをくれ」
そう言いながら初瀬と部屋を出て行った。

「千里のまま仕事するのかな、ハチさん」
その仁の呟きに千里ではなく千草がふっと笑った。

「いいんじゃないですか、他の人に千里と思わせておくのも」
「そういうものですか?」
「ええ。その方が千里だと思っている分、組員もちゃきちゃき仕事しますよ、きっと」
千草は案外、策士なのかもしれない。

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