「おっそいなー」

しかし待てども次のメールが中々来ない。
あれだけ唐突で大胆なメールを送ってきた奴だ。返信メールもすぐさま来るだろうと思っていたのに、二通目のメールは30分経っても送られて来ない。


「………」

そこで俺の不安は確信に変わった。
やはりあのメールは悪戯メールだったのだ。そうだ。普通に考えてそうに決まっているじゃないか。名前も書かずに、ただ「メールしたい」と送ってくるやつなどいるわけない。

俺は遊ばれたんだ。


「阿呆らし…」

一気に気分が下がった俺は、手に持っていた携帯をソファに投げ落とし、嫌な気持ちも全て洗い流したくて風呂に入ることにした。







*****



「あー、暑いー」

九月だから当たり前といえば当たり前だが、この暑さは異常過ぎる。風呂から上がり、片手でタオルを使い頭を拭き、もう片方の手で時間をみるために携帯電話を開く。

「……あ」

すると新着メールが届いていることに気が付いた。しかも二通も。差出人はどちらも同じ。先程の初期設定のままのアドレスからだ。
淡い期待を抱きながら、訳もなく緊張しながら急いでメールを開く。まずは先に送られてきた方から。

そして俺はそのメールを見た瞬間目が点になった。


『猿渡が好きだ。
だからメールした』


だってあまりにも唐突過ぎる。一通目の「メールしたい」という内容よりも、予想斜め上以上の突拍子もないメール。俺は震える指先で10分後に送られてきているもう一通のメールも開いてみた。


『やっぱり気持ち悪いか?』

俺からの返事がすぐ来なくて不安になって送ってきたのだろう。


…確かに違う意味で気持ちが悪い。
多分、…いや確実にこのメールの送り主は俺の事を知っている。そうでないと俺が猿渡だという苗字まで分かるわけがない。

まずこのメールの何処から突っ込むべきか。
やはり差出人の名前が書かれていないことからか。それともあまりにも唐突過ぎる告白からか。


「………」

俺は少し悩んだ後、メールを送った。
『俺のこと知ってるの?誰?』と。
なるべく傷付けないように、でも肝心なところはちゃんと訊けるように。

すると今度は比較的早く返事が返ってきた。

『同じクラスだから。』

ふむ。なるほど。
クラスメイトなのか。それなら俺のメールアドレスを入手しようと思えば簡単に手に入るだろうな。

しかし「誰?」については何も答えてくれないのか。
一回訊いてしまったら、二回も同じこと訊ねられないなぁ。しつこいと思われても嫌だし。
もしかしたら恥ずかしくてまだ言えないだけかもしれない。それか告白されて緊張している俺以上に、もしかしたら彼女も緊張しているのかもしれないな。


ここは彼女から名乗ってくれるまで、待つのが吉だな。




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