短編集 | ナノ

 育む愛



奈津様2800000番キリリク。「恋は盲目」すぐ後くらいの話。デートH/フェラ/対面座位






「おい、…道路側を歩くな。危ねぇだろ、こっち来い。」

「…わっ、ちょ…、何だよ、彼氏面するな…っ」

「……俺はお前の彼氏だろ?」

「………っ、」


俺が恥ずかしくなるような台詞をわざと吐いて、楽しそうに笑う滝本龍。だがしかし俺のためにわざわざ道路側を歩いてくれるあたり、ほんの少しは優しいのかもしれない。


『俺の告白を受けるなら、名前を教えろ。』


雰囲気に流されたのもあるかもしれない。
こいつに上手く言いくるめられたのかもしれない。
…だけど俺は自分の名前を教えた事に後悔はしていない。

……でも、やっぱり恥ずかしい。
女の子とも付き合ったことがないというのに、俺は男でしかも、“あの”滝本龍と付き合っているのだ。どういう対応をすればいいのかよく分からない。


「…何処、行くんですか…?」

「買い物だ。」

「…買い物?」

「恋人同士というのは、ショッピングとやらをするって雑誌で見た。」

「………?」


滝本龍の話を聞けばこうだ。
今まで恋人なんて居たことがないから(自分からは言わなかったが、恐らく身体だけの付き合いだったのだろう)、恋人が何をして一日を過ごすのか雑誌を読んで調べたらしい。


「一日中、セックスして愛を深めるわけにはいかねぇだろ?…そんな事したら、岬壊れてしまいそうだし。」

「…なっ…?!」


街中で平然と不謹慎な発言をする滝本龍に、俺は焦る。車のクラクションの音、人の声などに掻き消されつつあり誰にも聞こえてなさそうだが、ここが街中ということを少しは気にして欲しい。
…と、それよりも何て事を考えてるんだ。せ、セックスだなんて…。で、でも俺のことを気遣って二人で楽しむ方法を考えてくれていたって事は少し嬉しいかも…。


「……あ、あり…がとうございます…。」


少し素直になってお礼を言えば、まさか俺の口からそんな言葉が出ると思っていなかったのか、滝本龍は少し驚いているようだ。しかしすぐ様いつも通り口角を上げて微笑むと、俺の髪の毛をクシャクシャっと撫でてきた。


「…素直じゃねぇ所も可愛いが、素直になれば余計に可愛いなお前…。」

「……っ、う、…煩い…、」

「だけどあまり煽るな。」

「………?」

「我慢、…出来なくなっちまう。」


滝本龍は熱っぽく吐息を吐くと、俺の首筋に顔を埋め、皮膚にチュッと吸い付いてきたのだ。



「……し、死ね…!」


もちろん俺は焦る。戸惑う。街中でこんな事をしてくるなんて不謹慎だ。俺は泣きそうになりながら精一杯の罵声を滝本龍にぶつける。
そうすれば滝本龍はそんな俺を見て楽しそうに微笑みながら、「…お前を置いて先には死ねねぇな。」と暢気に気障な台詞を吐いたのだ。
滝本龍のそんな台詞を聞いて、俺の頬が更に赤くなったのは言うまでもないことだろう…。




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