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「お、俺、…帰ります…っ」
逃げ出そうと試みるものの、やはりいとも簡単に滝本龍に捕まってしまう。
…そしてそのまま腕を引っ張られ、押し倒されてしまった。
訪れるだろう衝撃に、目をギュッと瞑っていたのだが、……背中は打ち付けられることなく痛みは全くなかった。
「………ぁ…、」
どうやら滝本龍が、俺の背中と床がぶつかる直前に、支えてくれたお陰のようだ。
原因は押し倒してきた滝本龍なのだが、こうも優しく扱われると、何だか勘違いしてしまいそうになる…。
「……は、離せよ…」
「駄目だ。」
「か、帰る…っ」
「俺が許すと思うか?」
しかし優しく紳士的な対応は先程だけだったようで、今では押し倒した俺の上に跨って、獣のようにギラついた眼差しで俺を見下ろしてくる。
逃げ出したくても、上に乗られていると抵抗すらも出来ない。
「……自分でやれるんだろ?」
「え……?」
「やって見せろ。」
自分でケツ穴弄って俺の精液掻き出す所見せろ、と比喩表現もなしにいけしゃあしゃあと言う滝本龍に、羞恥で自分の頬が熱くなるのが分かった。
「出来ねぇのか?」
「………っ、」
そんなこと出来るわけもない。
するわけもない。滝本龍だって俺がそんなこと出来るわけがないのを分かって言っているだろうから、質が悪い。
「出来ねぇなら、ジッとしてろ。」
「……ゃ、ちょっ、」
「俺がやってやる。」
サディスティックな笑みを浮かべて口角を上げ、滝本龍は俺のズボンと下着を同時に下ろす。
抵抗する暇もなく、脱がされてしまい焦る。
「ば、馬鹿、…っ、」
「……いい声、聞かせろよ。」
「え、…ゃ、待って、」
「待てねぇ。」
「……ンっ、ひぁあァッ」
滝本龍は俺の制止の声など聞いてくれず、排泄器官であるお尻の穴に、再び指を入れてきた。
最初のように痛くはないのだが、やはり圧迫感が凄い…。
強引に二本の指を同時に入れられたものだが、口からは悲鳴の様な声が出てしまう。
そんな自分が出したとは思えない淫らな声に、滝本龍は満足気に笑みを浮かべると、挿入した指を動かしてきた。
「ゃ、…ァ、っ…ふぁあァ」
「…は、だらしねぇ顔。」
「ん、っ…ぁあぅ」
「俺の指はそんなに美味ぇか?」
そんなことあるはずがない。
……と言いたい所なのだが、100%否定できない自分が居ることが腹立たしい。
痛みや圧迫感、…そんなものを上回って、快楽が勝っている。
滝本龍が指を動かして、腸壁を刺激してくる度に、俺の身体は馬鹿みたいに大袈裟に快楽を感じて震える。
「あ、ひ…ァ、ぁあ…ン」
涙をポロポロと流して、飲みきれなくなった涎を口端から零して、喘ぎながら泣いている俺を見て、…何故だか滝本龍は愛おしいものを見るような目を俺に向けてくる。
「…ゃ、だ、…ンっ、その目…、駄目…ぇ」
駄目だ、駄目なんだ…。
勘違いしてしまう。
馬鹿な俺は、簡単に騙されてしまう。
……滝本龍が俺を好きなわけがない。
これは遊ばれているんだ。
滝本の気まぐれなんだ。
だから騙されては駄目だ。
「……何で、駄目なんだ?」
「ん、…ぅ、」
「おら、言ってみろ。」
「ひっ、ぁあぁァ」
答えない俺に滝本龍は、指で前立腺を弄って促してくる。
「…ぁンっ、ひゃぁあ…」
「言えよ。」
「だ、…だって、勘違いしちゃう…」
「…………」
……言えるわけがない。
“愛されている”のではないかと思ったことなんて…。
再び押し黙った俺を見て、滝本龍は乱暴に指を抜き挿しし始めた。
グチュグチュ、と腸液や先程中に出された滝本龍の精液が混ざり合って、いやらしい音を立てて泡立っている。
「ぁ、…ひぅ、ンっ」
強い刺激に、萎えていたはずの俺のペニスは、いつの間にか勃ち上がっており、先端からいやらしい汁をボタボタ零している。
「…ぁ、ん、ぁあ…ゃァ」
「…勘違いじゃねぇよ。」
「……ん…ぅ?」
「それは、勘違いじゃねぇ。」
俺の思っていることを感じ取ったのかは分からない。
…だけど滝本龍は真剣な眼差しでそう言ってくれたことは確かだ。
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