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「藍崎…っ、」
「……緑間」
加減なんか出来なかった。
下手すれば折れてしまいそうな程、力強く抱きしめているというのに、緑間は痛そうな表情一つ浮かべず、本当に嬉しそうに笑む。
「……お前の所為だ」
「………?」
「誰も今まで俺に近寄りもしなかったのに…」
「藍崎……」
そうだ。
産まれたときから俺は愛された事がなかったんだ。
気付いた時には両親なんて近くに居ず、ただ雇われただけの奴が俺を育てていた。
……愛なんてものは貰ったことも、与えたこともなかった。
「お前が見返りのない綺麗な思いを俺に寄せるから、」
「…あ、…いざき…」
「…もう、お前のことしか考えられなくなっちまったじゃねぇか……」
緑間から初めて思いを告げられたその日から、俺の頭の中は緑間でいっぱいになっていた。
悲しそうな表情、嬉しそうな表情、焦った表情、…そして俺をおかずに自慰していたときの緑間のエロい表情…。忘れられず、どれも今でも鮮明に思い出せる。
「……責任、取れるのかよ…?」
「…あい、ざき……」
「俺をここまで夢中にさせといて、
……逃げるなんてことさせねぇからな。」
目の前でポロポロと大粒の涙を流す緑間。
俺はその雫を舐め、…そのまま緑間に口付けた。
濃厚な口付けではなく、感触を味わうように何度も何度も唇を重ねた。触れ合うだけのキスだというのに、緑間の唇はまるで俺のために存在しているかのように、とても心地良く思える。
「藍崎……」
「何だよ?」
「俺も、…藍崎の所為で、こんな身体になっちゃうんだよ?」
「…………」
「……責任、取ってくれる…?」
実は抱き締めたときから気付いていた。
距離がゼロになって下半身すらも密着したときに、俺の脚に当たる緑間の勃起したチンポ。
「……上等じゃねぇか。」
「…う…ぁ…っ、」
「俺が一生責任取ってやるよ。」
絶対離すものか。
こいつは、…緑間は俺だけのものだ。
一生責任取ってやる。こいつは俺が世界一幸せにしてやる。
「…愛してる。」
「………う、…ん…」
この台詞を口にしたのは二回目。最初は緑間が聞いていないと思い口にしたのだが、…面と向かって口にしたのはこれが初めてだ。きっと緑間以外にこの甘ったるい台詞を吐くことなんてないだろう。
「…何、泣いてんだよ…?」
「だって、…嬉し、くて…」
「ばーか…」
しゃくり上げながら泣き続ける緑間の背中を、俺は慣れない手付きで自分なりに優しく撫でた。
泣きながらも、「好き、大好き」と何度も口にする緑間の思いを聞きながら、…俺は幸せ過ぎてくすぐったい思いをしながら嬉しくて笑った。
こんなにも俺の感情を乱させるのは、きっとこいつだけ…。END
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