短編集 | ナノ

 優しい嘘吐き人



<内容>
ヤンデレ描写・暴力表現有り。序盤シリアス風味。





●藍崎side






「……………、」


未だに息を荒げたまま、ベッドの上で横になって俺を見る緑間。
…俺はどうすればいい?どう答えれば正解なんだ?表情には出ていないかもしれねぇが、俺は今までにないほど焦っている。


「……っ、」

「藍崎……?」


このままもう一度面と向かって、正直に俺の思いを告げた方が、自分のためにも、そして何より緑間のためにもいいということは分かっている。


…ああ、だけど……、



「…藍崎?」

「………せぇな…」

「……?」

「煩ぇよ…」

「……っ、…ご、めんなさい…」


…どうしても言えそうにない。
自分に苛つく。むかつく。何でこんなに捻くれているんだ、俺は…。緑間にこんな顔させたいわけじゃねぇのに。緑間のこんな顔が見たいわけじゃねぇのに。
「好きだ」って、「愛している」って言えば緑間の喜んだ表情が見ることが出来るのに、…そんなことすら出来ない自分に腹が立つ。


「……ふ、…ぇ、」

必死に声を抑えながら泣く緑間の姿を見て、俺も泣きたくなった。だけど涙すら出ることがなく、より一層苦しくなる。
俺は言葉で優しく出来ない代わりに、精液で汚れた緑間の身体をより優しく拭いてやった。緑間の泣かした原因を作ったのは俺なのに、何て都合のいい奴なんだ俺は…。
優しくしてやりてぇのに、甘やかしてやりてぇのに、…何でそんな事すら出来ないのだろうか。


やっぱり俺は人を愛す資格がないのかもしれない…。



道中無言が続く中、目元を真っ赤に腫らした緑間を家まで送った。緑間は必死に笑顔を作って、「送ってくれてありがとう。」と言って家の中に入っていったのだ。

……違う違う違う。
俺が見たかったのは、そんな作り物の笑みじゃない。



「……クソ、」


この苛立ちを晴らすべく、手当たり次第に何十人もの殴ったのだが、…どうしても最後に見た緑間の表情が忘れられない。

やはり俺たちは近づいてはいけなかったんだ。
緑間を幸せにしてやれる自信も資格もねぇ俺なんかが、近づいてはいけなかったんだ。

だけどもう駄目だ。
…もう知ってしまった。近づいた後で後悔しても遅い。
どう足掻いても俺は緑間が好きなんだ。例え緑間が逃げようとも、俺の事を嫌悪しようとも、…もう遅い。




prev / next


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -