短編集 | ナノ

 2



※この話はとある少年漫画に感化されて、カッとなってかいた話です。似たよった部分がありますので、そういうのが苦手な方は閲覧をお控えしてくださいませ。







「…さ、なだ…?」


頭の痛みに耐えながら搾り出した声は、自分でもびっくりするほど掠れていた。


「悠斗…!」

「……な、に…これ?」

「…っ、…悪い」


違う。真田に謝って欲しいわけではない。
この状況を説明して欲しいのだ。
何で俺だけでなく真田も手錠されているのか、その男は誰なのか。……真田に、怪我はないのか。

聞きたいことはたくさんある。
疑問もたくさんある。どれから聞けばいいのか分からないほどに。



「あんた、…誰?」

「俺の事、知らねぇか?」

「………?」


俺がお前の事なんて知るわけないだろ。
薄暗いこの場所では、男の顔さえもよく見えず、大まかな体系と声でしか判断するしか出来ないのだ。



「俺は真田の事が憎いんだ。」

「…………」

「こいつを苦しめてやりたい。」

「………っ」

「…だから、お前を連れてきた。」


要するに男の話を纏めるとこうだ。
この男は何故だか真田の事を殺したいほど憎んでいるらしい。そこで男は真田の弱点(一ヶ月ほど真田の弱点を探したのだが、女一人とも会わず、ほぼ俺と毎日会っているため“真田の弱点”は俺だと判断したらしい)を使って、真田を陥れようとしているのだ。



「災難だな、お前も。こんな奴と仲良くしていたばかりに、頭殴られてこんな所に連れて来られて。」

「…悠斗に手を出したら、俺がお前を殺す。」

「その状態でどうやって?」

「殺す。絶対殺す。

悠斗に傷一つでも付けてみろ。…お前の事絶対殺してやるからな…」

「さ、なだ…」


憎いだの、殺すだの、この二人の言葉は冗談とは思えない。
しかし場にそぐわないものの、真田の台詞におもわずときめいてしまう自分が居る。



「…一体お前らって、どういう関係?」

「………え?」

「兄弟じぇねぇんだろ?真田に親友?…、んなの居るわけねぇだろうし…。」

「…………」


一応恋人同士です。
と言えるわけもなく、俺は押し黙る。
そうか、普通に考えて「同性同士」だから恋人なんていう発想にはいきつかないよな。



「何なんだ、お前等の関係は?」

「…………、」

「答えろよ。」

「…い、やだ」


男は真田には訊かずに、俺に訊ねてきた。
手足を繋がれているため、身動きは取れない。手錠に繋がられたまま座り込んでいる俺に、男は顔の高さを合わせてきた。



「お前なんかに、…教えるもんか…、」

「ふーん。」

「………、」

「賢そうに見えて、お前って馬鹿だな。」


ニヤリと口角を上げて笑むと、男は口答えをする俺が気に喰わなかったのか、思い切り頬を叩いてきた。


「……っ?!、…い、痛っ」

「…悠斗…!」


パーで叩かれたのか、グーで殴られたのか分からなかった。兎に角痛い。
衝撃で口の中を噛んでしまったせいか、口内に血の味が広がる。



「……ぶっ殺す…」


遠くから金属がぶつかり合う音が聞こえる。恐らく真田が、必死に手錠を外そうとしているのだろう。
俺はあまりの痛さにおもわず涙ぐみながらも、口内に溜まった血をペッと地面に吐き出し、男を睨み付けてやった。
男は俺の目付きに怯えるわけでもなく、怒るわけでもなく、何故か楽しそうにほくそ笑んだ。



「……は、いい目するなお前。」

「触るなよ、汚い手で。」

「………最高。」


血が滲む口端をなぞられ、触るなと言い放ち顔を逸らせば、もう一度男から頬を殴られた。





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