▼ 2
※この話はとある少年漫画に感化されて、カッとなってかいた話です。似たよった部分がありますので、そういうのが苦手な方は閲覧をお控えしてくださいませ。「…さ、なだ…?」
頭の痛みに耐えながら搾り出した声は、自分でもびっくりするほど掠れていた。
「悠斗…!」
「……な、に…これ?」
「…っ、…悪い」
違う。真田に謝って欲しいわけではない。
この状況を説明して欲しいのだ。
何で俺だけでなく真田も手錠されているのか、その男は誰なのか。……真田に、怪我はないのか。
聞きたいことはたくさんある。
疑問もたくさんある。どれから聞けばいいのか分からないほどに。
「あんた、…誰?」
「俺の事、知らねぇか?」
「………?」
俺がお前の事なんて知るわけないだろ。
薄暗いこの場所では、男の顔さえもよく見えず、大まかな体系と声でしか判断するしか出来ないのだ。
「俺は真田の事が憎いんだ。」
「…………」
「こいつを苦しめてやりたい。」
「………っ」
「…だから、お前を連れてきた。」
要するに男の話を纏めるとこうだ。
この男は何故だか真田の事を殺したいほど憎んでいるらしい。そこで男は真田の弱点(一ヶ月ほど真田の弱点を探したのだが、女一人とも会わず、ほぼ俺と毎日会っているため“真田の弱点”は俺だと判断したらしい)を使って、真田を陥れようとしているのだ。
「災難だな、お前も。こんな奴と仲良くしていたばかりに、頭殴られてこんな所に連れて来られて。」
「…悠斗に手を出したら、俺がお前を殺す。」
「その状態でどうやって?」
「殺す。絶対殺す。
悠斗に傷一つでも付けてみろ。…お前の事絶対殺してやるからな…」
「さ、なだ…」
憎いだの、殺すだの、この二人の言葉は冗談とは思えない。
しかし場にそぐわないものの、真田の台詞におもわずときめいてしまう自分が居る。
「…一体お前らって、どういう関係?」
「………え?」
「兄弟じぇねぇんだろ?真田に親友?…、んなの居るわけねぇだろうし…。」
「…………」
一応恋人同士です。
と言えるわけもなく、俺は押し黙る。
そうか、普通に考えて「同性同士」だから恋人なんていう発想にはいきつかないよな。
「何なんだ、お前等の関係は?」
「…………、」
「答えろよ。」
「…い、やだ」
男は真田には訊かずに、俺に訊ねてきた。
手足を繋がれているため、身動きは取れない。手錠に繋がられたまま座り込んでいる俺に、男は顔の高さを合わせてきた。
「お前なんかに、…教えるもんか…、」
「ふーん。」
「………、」
「賢そうに見えて、お前って馬鹿だな。」
ニヤリと口角を上げて笑むと、男は口答えをする俺が気に喰わなかったのか、思い切り頬を叩いてきた。
「……っ?!、…い、痛っ」
「…悠斗…!」
パーで叩かれたのか、グーで殴られたのか分からなかった。兎に角痛い。
衝撃で口の中を噛んでしまったせいか、口内に血の味が広がる。
「……ぶっ殺す…」
遠くから金属がぶつかり合う音が聞こえる。恐らく真田が、必死に手錠を外そうとしているのだろう。
俺はあまりの痛さにおもわず涙ぐみながらも、口内に溜まった血をペッと地面に吐き出し、男を睨み付けてやった。
男は俺の目付きに怯えるわけでもなく、怒るわけでもなく、何故か楽しそうにほくそ笑んだ。
「……は、いい目するなお前。」
「触るなよ、汚い手で。」
「………最高。」
血が滲む口端をなぞられ、触るなと言い放ち顔を逸らせば、もう一度男から頬を殴られた。
prev /
next