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「あ、ぅ…ああァっ」
男で、しかも可愛くもない俺なんかを犯して、何が楽しいのだろうか?俺には全く理解出来ない。
柔らかくて可愛い女の子を抱いた方が、楽しいし気持ちいいに決まっている。
……何で、俺なんだよ…?
「ひぁあ…ァ、っ…ぁあン」
「…堪らねぇな、おら…もっと鳴けよ。」
「ん、ゃ…ああぁ、ひぅ…っ」
俺みたいな男を屈服させるのが趣味なのだろうか…?
いやそんなわけないよな。真田に初めて会ったときに、「男に興味なんてねぇ。」と吐き捨てられたのだから。
「…っ、…ん、く、っ」
俺は真田の言う通りに声なんて出したくなくて、ベッドシーツを力の限り握り締めて、何とか声を抑える。
白いベッドシーツには俺の汗や涙、そして涎が染み込んでいくのが見える。
「…ン、っ…く…はあ…ァ」
「声を抑えるな。」
「ひ、…ぁ…っ、ふ…ぁ」
「ちっ、…ったく、てめぇは本当に面倒な奴だな。」
「……ああ…ンっ」
“面倒”だと言っているくせに、真田の声色は凄く楽しそうに聞こえる。
今更後悔しても遅いのだが、多分真田のサディスティックな性格を、声を抑えることによって煽ってしまったのではないだろうか。
「いいぜ。…精々我慢してな。」
「ひっ、…ン、…あぅ…?!」
真田はそう言うと、俺の尻タブを手の平でパンッと何度も叩き、腰を引き寄せる。ありえなところまで真田のペニスを受け入れている俺の腸内は、もう腸液や先走りの液でドロドロだ。
「ひぁあ…ぁあ…っ」
「どうした?…声、出したくねぇんだろ?」
「ン、…ん、ぅ…っ」
真田が腰を動かす度に、肌のぶつかり合う破裂音に、結合部から聞こえてくるグチュ、クチュといういやらしい音が、嫌でも耳に入ってくる。
それに加え何が楽しいのか、相変わらず俺の尻を叩いてスパンキングを楽しんでいる真田。
卑猥な音が混ざり合うのが聞こえ、俺の被虐心が煽られてしまう。
「ああ…、っ、ン…ぅああ…っ」
「我慢出来ねぇほど、感じてるんだろ?」
「あ、…ンっ、ひぁあ…ぁ、ち、違…、」
「違わねぇ…。てめぇは、女なんかじゃ満足出来ねぇ身体になってるんだよ。」
「…ち、違、…ひぁあ…ぁあン」
…俺だって薄々気付いていた。
だけどこうして人から改めて言われるのは、凄く嫌だ。
「違う、止めろ」と口では否定しても、俺は暴れたり蹴ったりなど抵抗はしない。…いや、出来ないのだ。
真田に犯されて、何処か嬉しいと思っている自分が居るのだから…。
「んっ、…ああァっ」
「悠斗、てめぇはな、…男に…俺に抱かれるしかねぇんだよ。」
「ひぁ…ぁあ…ンっ!」
パンッと一際強く尻を叩かれ、真田の凶器のような大きいペニスで前立腺を擦られ、俺の身体は強すぎる快楽に震える。
「…んぁあ…ぁあ…ァ」
「はっ、…相変わらず狭ぇな…」
「ああ…ぁンっ、…ふぁあ…」
…しかし何故俺なのだろうか?
真田ほどの男だったら、きっと女も男も選び放題だと思うのに…。
何で、…俺なんだ…?
「おら、…ここがいいんだろ?」
「ひぁ…ぁあ…ンっ」
「相変わらずの淫乱野郎だな。」
「…んっ、ふぁ…、何で…、」
「…あ゛?」
「何で、…ン、俺、…何だよ…?」
疑問に思っていたことが、ポロリと口から出てしまった。…だが聞かずには居られない。
突拍子もない質問に、真田の腰の動きが止まる。
「…何がだ?」
「…お前なら、女だって選び放題だろ…?…っ、何で、男の、…ン、俺なんだ…よ?」
だっておかしいだろ?
こういうのは男と女の異性同士ですることだ。
愛し合う者同士が行う行為であって、相手を陵辱させることではない。
「…遊び、なら…、俺じゃなくていいだろ?…離せよ。」
「………………」
「おい、聞いてるのか?
……っ、んぅ…?!」
上手く力が入らない身体をなんとか動かして、とりあえず腸内に入っている物を抜こうとすると、…急に真田が腰を打ち付けてきた。
「ひぃっ…?!ああ…ン!…はあァ」
「…………ふざけんな。」
「…ああ…ぁ、ァ……?」
「“遊び”だ?」
「さ、…なだ、…ン、ちょ、…馬鹿、ああ…ン」
「“遊び”で男なんか抱くと思うか?」
まるで獣同士の交尾のような、理性も優しさもない真田の動き。まるで苛立ちや不満を俺にぶつけているようだ。
「んぁあ…ぁあァ」
「…俺は男を抱く趣味なんかねぇ…。」
「だって、…俺、男…、っ、んぁ…ァ」
「………てめぇだからだろうが…。」
「……は…?」
真田はそう言うと同時に、俺の中に入れていたペニスを抜き取った。そして崩れ落ちる俺の身体を、その逞しい腕で支えてくれる。
「……さ、真田…?」
「…ちっ」
「な、何…?」
「…ここまで言っても分からねぇのか…?」
どういうこと…?
何だか上手く状況についていけないんだけど…。
「てめぇだからだろうが…」?
意味が分からない。
頭の上に疑問符を浮かべている俺に気付いたのだろう、真田は舌打ちをした後、ゆっくりとした口調で喋り出した。
「悠斗だから抱いてるんだよ…。」
「…え、ちょ、…ま、っ」
「男とか、女とか、…そういう小せぇことなんかは関係ねぇ。」
「…さ、なだ…?」
真田らしくない口調に言葉。俺は背後に居る真田の表情を見ようと、首だけを振り向くと……、
「…っ、馬鹿野郎。…こっち見るんじゃねぇ。」
「……あ、…っ」
すぐに真田に身体を押さえつけられてしまった。
「………っ、」
しかしどうしたものか…。
俺は、はっきりと見てしまった。
今まで見たことがないくらいの、真田の真っ赤な顔を…。
「……えっと、」
「煩ぇ、喋んな。犯すぞ。」
「な、何だよ…それ…。」
「っ、…くそ…、」
再び背後から真田の舌打ちが聞こえてきた。
どうやら怒っているのではなくて、…照れ隠しのように思える。
…真田に押さえつけられているため表情は見えないのだが、恐らくそうだろう。
しかし、不本意だが押さえつけられていて良かった。
…だって、向かい合わせだったら…、
きっと真田以上に頬を赤く染めているところを見られていたと思うから…。
こうして俺たちは暫く言葉も発しないまま、二人だけの気まずい時間を過ごしたのであった。
END
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