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「……ひっ…?!」
俺は身を屈めて、扉から入ってきた人物から見えないように隠れる。
「誰か居るんですか?」
聞き覚えのある低い男の人の声。
きっと明かりが付いているから、誰か居るのだと思い声を掛けたようだった。
…恐らく今の俺の姿に気付いていないのだろう。
「…あ、はい!い、…居ます!」
俺は肌蹴ているシャツを急いで整えて、涙と涎で汚れている顔を手の平で拭う。
そしてデスクの下にある空間に赤坂に入るように告げると、俺も露出していた下半身を隠す。
「…あ、…渡部先生。」
「青木先生だったのか。仕事、ご苦労さん。」
そこに居たのは隣のクラスの担任の渡辺先生だった。
新米教師である俺に色々と指導してくれたいい先生だ。
「…渡辺先生、もう帰ったのかと思っていました。」
「いや、準備室で問題用紙作ってた。」
「そ、…そうだったんですか。」
あ、危ない。
やっぱりまだ残っていたんだ。
とりあえずバレていないようで良かった。
俺の声とか、聞こえてなかったんだよな…?
「あ、…あの、何か聞こえました?」
「いや、何も。…何かあったのか?」
「い、…いえ、聞こえてないようでしたら良かったです。」
良かった。どうやら本当に聞こえていなかったようだ。今の時点では何も気付かれていないらしい。
「何も聞こえなかったが、…それより青木先生熱あるんじゃないか?顔、赤いぞ。」
「…え…っ?!」
「朝は何ともなかったよな?…頑張り過ぎじゃないか?」
「い、…いえ、だ、大丈夫です。熱とかそんなのじゃないですから……、…っ、…ン…?!」
「…どうした?」
“熱とかそんなのじゃないですから、心配しないでください”と渡辺先生に告げようとしたのだが、急に訪れた下半身への甘い疼きに俺は途中で言葉を出せなくなった。
…何故なら赤坂がこんな時に、再び俺のペニスを銜えだしたから…。
「……ふ…ぁ、ン…っ」
「青木先生?」
先程イく寸前で愛撫を止められていたのだ。
少し触られただけでも敏感に快楽を得てしまう今の俺の身体は、赤坂の舌の動きに簡単に反応してしまう。
クチュ、チュパッ…
「…ひ…ぃ…っ」
再び聞こえてくるいやらしい音に、俺は鼻に掛かったような声を出しながら、身体を震わせる。
「青木先生、どうした?具合悪くなったか?」
「…あ、…ち、違うんです…っ、…だ、大丈夫だから…、」
早く何処かに行ってください…っ。
ど、どうしよう。
何で…?赤坂は何でこんなことをするの?
いくら意地悪だからって、これは酷いよ。
渡辺先生が目の前に居るのに…っ。
気持ちいい、気持ち良いよ。
どうしよう、イきたい。イきそう。
我慢できない。精液出したいのに…。
声我慢できないのに…。
「…ん、…く、っ、ふぁ…」
「青木先生、今日車か?俺が家まで送るから。」
「ほ、…本当に大丈夫…、で、す。」
「そんなに汗を掻いているくせに、嘘を吐くな。…ほら、早く来い。」
本当にどうすればいいんだ?
赤坂は離してくれないし、俺の身体も上手く動かないし。渡辺先生にバレてしまう。
“早く来い”、と言われた以上、何かしら動きを見せないと、きっと渡辺先生はこっちに来るだろう。
そうすれば辛うじて机で隠れている俺の下半身は、渡辺先生に見られることになる。
「…ひぅ、ン…っ」
ジュポ、ヌプ、クチュ…
必死に声を我慢しているのだが、嫌でも漏れてしまう。しかも声を我慢しても、俺の下半身から鳴っている卑猥な音が渡辺先生に気付かれてしまうかもしれない。
「あ、…あの、本当に大丈夫なんで、」
「………青木先生」
「お、れのことは気にせず、…先に帰って…っ、…ください…。おれ、まだ仕事が残ってますから…ぁ」
一歩間違えれば喘ぎ声になっていただろう。
快楽に負けないように自我を保って、俺は渡辺先生に帰るように告げた。
「……そうか。分かった。無理、するなよ?」
「は…、い。ご心配ありがとう、ございます…っ」
「また明日な。」
「おつかれ、さまです…、ンっ」
渡辺先生は最後に俺の顔をチラリと見ると、名残惜しそうに帰って行った。
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