▼ 6.8
殴る。
殴る。
殴る。
信二とのより深い絆を築ける切っ掛けをくれた奴等だからといって俺は容赦はしない。例え男だろうと、女だろうと。
俺以外の奴が俺の許しもなしに信二に触れていいわけがない。傷付けていいわけがない。その特権は俺だけにあるはずだ。間違ってもお前らのようなゴミ風情にあるわけがない。
「一輝君?!止めてよ、死んじゃうよ!」
率先して信二に暴力を働いていた男を制裁していると、後ろから香水臭い女が俺に抱き付いてきた。こいつも信二に汚い言葉を浴びせた不埒な輩だ。
「…ね?私たちこのこと誰にも言わないからっ。もう止めて」
「……うぜえ」
「きゃっ?!っぐ、」
俺は手加減なしに女の腹に蹴りを入れた。
その一撃だけで女は口から泡を吹いて倒れた。だがこんなもので済むわけがない。お前は俺の信二と会話しただけでは飽き足らず、暴言まで吐いていたはずだ。到底許せることではない。
だがこの女への制裁は後回しだ。
まずは逃げようと惨めに這いずり回っているこの男からだ。俺は手加減なしに男の右足を蹴り、踏み付けた。そうすると簡単にゴキッという音を立てて男の足が折れたのが分かった。
「ぐぁああ!…ひぃっ、か、かんべんして、くれ…っ」
「………」
「はぁ、ひっ、お、おおお俺たちが何したって言うんだよおー!」
「あ゛?」
“俺たちが何をした”だと?
こいつらは自分たちがしでかした罪を全く理解していないというのか?俺は男の言葉に腹が立ち、汚ねぇ面に蹴りを入れ続ける。
「っ、ぐぁあ!」
「ふざけんな、死ねよ」
「ひぃい、ゆる、ゆるしっ」
「お前は俺の信二に気安く話し掛け、俺の信二をパシリという名の道具扱いにし、その汚い足で俺の信二を蹴り上げただろうが!」
「…ぅぁ、ああぁ」
「その罪すら分かってねぇのか、あ゛?!」
信二は俺のだ。
だから喋っていいのも、触れていいのも、傷付けていいのも俺だけが許される行為。本当はお前らのような下賎な輩が信二に近づくことさえも俺は許せない。
「むかつく」
この苛立ちをぶつけるように、男に重い蹴りを食らわせば、男はまるでぶつりと電源が切れたかのように動かなくなった。そんな無様な男の姿を見て、少しだけ苛立ちが軽くなったような気がした。
「………」
だがこの苛立ちが完璧になくなることはない。
もしその時が来るとしたら、俺の計画が無事成功したときだろう。早くこんな糞みたいな高校を卒業して、大学に通い、自分の力だけで収入を得られるようになったら、信二を檻に閉じ込めてしまおう。そうすれば信二は俺だけのために笑い、俺だけのために喋り、俺だけを見てくれるはずだ。六年前からの俺の夢。これを現実に出来るのなら、これくらいの苛立ち我慢してみせる。
だから現実になるその日まで、
俺は邪魔となる存在を
排除し続けていこう。
それが俺と信二のためになる。
例え最初は信二に拒まれたとしても、きっといつかは理解してくれるはず。
だからそんな未来のためにも、俺はゴミ掃除を頑張らないといけないな。
さて、どいつから片付けようか…。
END
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