短編集 | ナノ

 3.5


攻め視点。暴力表現有り








持っていた松葉杖を投げ出し、折れた足を引き摺りながら、俺から必死に逃げようとする男の無様な姿を見下した。


「…おい」


“鬼ごっこ”はもう飽きた。そろそろ終わりにしようぜ。
俺は力の加減なしに、地面に倒れ込んでいる男の負傷している足を踏み潰した。



「ぐ、っ…ぁ!」

「手間、掛けさせんなよ」



痛みにもがき回る男。それを笑いながら見る俺。
傍から見たらどう思われるのだろうか。
…まぁ、考えたところで関係ねぇか。こんな所誰も来やしない。



「大人しく死ね」

「……っ」


生かしておいたのが間違いだったな。早く処分しておけば良かった。
まさか再び信二に近付くとは。

俺の信二の肩に触れていた。
俺の信二に話し掛けていた。



「気に喰わねぇな…」


信二の良い所を知っているのは俺だけでいいんだ。俺以外は知らなくていい。
あの馬鹿な所も、泣き虫な所も、意外と頑固な所も、笑顔が可愛い所も。全部、俺だけが知っていればいい。



調べればすぐに分かった。
信二をクラス内で苛め、暴行を加え出した主犯格はコイツだと。そしてその理由は「コイツが信二が好きだから」なのだと。



「信二の泣き顔は可愛かっただろ?」

「…、ぅ、ぐぁあっ!」

「てめぇなんかが見るのも勿体ないくらいに」

「っ、痛…ッ」


好きな相手を苛めるとか小学生かよ、と鼻で笑いたいところだが、その気持ちも分からなくはない。気に喰わないが、それはコイツなりの信二への愛情表現だったのだろう。


さぞ俺が邪魔だっただろうな。



「お前、信二に毎回言っていたらしいな」

「……な、にが…だよ?」

「俺ともう会うな、と」

「……っ、」

「そうすれば苛めもやめてやると」

「………、」

「だが頑として信二は首を縦には振らなかった」


その事実が嬉しくて自然と口角が上がる。その一方、足元で蹲っている男は悔しそうに唇を噛み締めていた。


弱い信二の事だ。
クラス内から無視されることも、悪口を言われることも、暴力を受けることも、どれも苦痛だったはずだ。
だけど、俺と一緒に居る事といじめを止めるようにする事と、天秤に掛けることすらせずに俺と一緒に居続ける事を選んでくれた。

凄く嬉しい事じゃねぇか。



「俺と信二の世界にお前は必要ない」

「…お前、狂ってやがる…っ」

「ああ…、そうだな」


それは自分で分かっている。
俺と信二を引き離そうとする奴は、例え自分の親であろうと、信二を産んでくれた親であろうと、邪魔ならば処分する。


だがな。

これが不器用な俺なりの信二への愛の形なんだよ。
お前のようなゴミに口を出される事はない。








だから。


邪魔者は排除する。


それだけだ。







これが終わったら、

信二に会いに行こう。



おもいっきり甘やかしてやりたい気分だ。






END


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