短編集 | ナノ

 おまけ





「空、泣くなって」

「う、ん…」


子供のように可愛らしく泣きじゃくる空の顔中にキスを送る。そうすれば空は少し恥ずかしそうに、だが何処か嬉しそうに涙を流しながら笑う。その笑顔でさえもまた一段と愛らしく思える。


「………、」


…俺、空にベタ惚れじゃねぇか。何で今までこの気持ちに気が付かなかったんだろうか。もっと早く気付いていれば誰も傷付きもしなかっただろうに。…今更そう思っても後の祭りだが。…俺って意外と鈍いのか?いやいや、そんなことねぇよな。

そんな事を思いながら悶々としていると、急に空から「ごめん」と謝られた。


「…どうした?」

「いや、その…」

「……?」

「俺、陸も…さやかさんも傷付けちゃったから」


俺とあの女に、空が?
むしろ逆じゃねぇのか?

すると空は事細かに話してくれた。


ずっと前から俺の事が好きだったこと。
だけどそれを打ち明ける勇気はなかったこと。
でもどうしても俺を諦めきれなかったこと。
だから「3P」という話を俺に持ち掛けたこと。


「お前…」

「陸と直接出来なくても、…どうしても陸のそういう“雄の顔”が見てみたかったんだ」

「………」

「ご、ごめん!…やっぱり、嫌いになった、かな?」


不安そうに俺をジッと見つめてくる空。
俺が空を嫌いになることなんて絶対にはない。だが、俺は少しばかり驚いている。空にもそういう欲求があったのかと。


「空は性欲とかねぇのかと思ってた」

「…お、俺だって男だよ…っ」

「お前そういう話今までしたことなかったじゃねぇか」

「だって、陸とそういう話したら、…へ、変な気分になっちゃうし」

「……!」


か、可愛い事言ってくれるじゃねぇか。まじでムラムラしてきたんだが…。俺をこれ以上煽ってどうするつもりだよ…。


「最初は凄く満足だったんだ。陸がさやかさんとしているのを見るのは少し辛かったけど、…陸のそういう部分を見れて凄く興奮してた…。だけど、やっぱり、…後から辛くなって、」

「………」

「自分から言い出したことなのに、俺が中途半端な事するから、陸もさやかさんも傷付けちゃった…」


しょぼんと落ち込む空の頭を俺は撫でてやる。すると空は少し言いにくそうに「…だけどね」と話を続けた。


「……どうした?」

「お、俺少しだけ良かったなって思うことがあって」

「何だ?」

「り、陸のこと気持ち良くしてあげられる!…俺、口でするの、…少しは上達したでしょ…?」

「……っ」

「…俺、家に帰って一人で練習してたし…!」

「……?!」


れ、んしゅう、だと?どういう意味だ?
そのままの意味で捉えていいのか?
そ、空が練習。俺のために。
何で?…食べ物とかか…?!

やべ、妄想止まらねぇ。


意外と積極的な一面を持つ空に、俺は無駄に煽られながら、襲わないように必死に理性を保っていたのだった。





END



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