短編集 | ナノ

 8





あれからほぼ毎日といっていいほど、俺たちは同じ日々を過ごしている。大学へ行き、俺は空の家に行って、そして女が来ると同時に事を始める。
本当に不可解な状況だ。少しでも何かあれば何もかも崩れてしまいそうな曖昧な関係。でも俺は未だにこれを止められないでいる。

空が好きだから、もっと触りたいし、もっと触ってもらいたい。

この後の空との至福の時間を過ごすためとはいえ、好きな奴の前で、女とセックスしている俺はどうかしていると思うが、だからこそ未だに女の膣でイっていないことが、唯一の心の救いだと思っている。

…俺はとんだ最低野郎だ。



「おい、帰れ。」

「はいはい、言われなくても帰るわよ」


今日も俺は女の膣内でイかなかった。女に悟られないようにすぐさま付けていたコンドームを外して、半勃ちのままの自身を下着の中に直す。そしていつものように冷たい言葉を浴びせ、早くこの場から立ち去るように命令する。

事が終わればすぐに帰される事が嫌でも分かったのか、女は俺が言う前に帰り支度を始めていた。



「………」


俺は相変わらずこの女には冷遇している。だがそれなのに、最近では金を払わなくても女は此処に来る。理解不能だが、どうやら俺の乱暴な態度を気に入ったようなのだ。…本当に女というのは変な奴が多い。



「またね。」

「…は、はい…っ」


そしていつもと同じように口でイかされ力の抜けている空の頬に軽くキスをして女は帰って行った。



「…空」

「……な、に?」

「こっちに来い」

「う、うん」


俺は近くにあったタオルで空の頬を拭いてやる。女の口紅が空の白い頬に付いているのが凄く不快だ。少し乱暴にぬぐってやれば、空は「…痛いよっ」と声を上げて眉間に皺を寄せた。


「汚れ、落ちねぇ」

「…さやかさんの口紅?」

「……口紅だけじゃねぇかもな」

「……俺の顔、まだ汚れてた?」

「……分からねぇ」


…きっと、口紅だけじゃない。
俺の所為で綺麗な空が汚れてしまったような気がする。気のせいのようだが、気のせいじゃない。
見えない何かで汚れてしまったのかもしれない。俺の心と同じように。



「…?変な陸」

「………」


ふにゃと笑う空の笑顔が愛おしい。
それと同時に、この世界に空を引きずり込んでしまったことへの後悔で胸が締め付けられそうなほど苦しくなった。


でも、どうしてだ。
駄目だと分かっているのに。
ここで止めなければいけないと分かっているのに。


止められそうにはない…。




「…空」

「今日も、イけなかったんでしょ?」

「……ああ」

「う、うん。俺が、口でしてあげるから…」

「…………、」


空が俺の汚い物を口で銜えるのは何回目だろうか。途中で数えるのは止めたから覚えてはいない。
数をこなしているのに、未だに俺のズボンに手を掛ける空の手は震えている。



「空、」

「…下手くそで、ごめんね」


チロっと空の赤い舌が見える。拙い動きで俺の先端部分を舐め、そして吸う。背徳感と曖昧な快楽にゾクッと背筋が震えた。
相変わらず俺もこの行為に緊張していたりする一人だ。


「舌、もっと絡めてみろ」

「…こ、こう?」

「もっとだ」

「…ン、わかった、…っ、ふ、ぅ」


空は覚えが悪い。それは勉強でも箸の使い方にしても。いくら俺が教えても鈍臭い空に、身に付くまでかなりの時間が掛かる。

だがこっちの方はというと、上達がかなり早い。


俺が空のフェラの仕方に口を出すようになったのは、つい最近だ。それまでは空の好きなようにさせていた。その方が空が楽だと思っていたし、その拙いやり方だからこそ感じるものがあったから。
だが空が俺にやり方を教えてくれと頼んできたときに教え始めたというのに、…凄く上手くなっている。



「……陸、きもち…?」

「ああ。空はこっちの勉強は得意のようだな。」

「…っ、そ、そんなこと…」

「すげぇ、いい」

「……ン、ぅ」


俺が教えたやり方で、一生懸命俺の物を銜える空が凄く可愛い。この感情は、優越感や支配欲というのだろうか。駄目だと分かっているのに、これだからこそ止められない。

口端から飲み込めなくなった涎や、俺の先走り汁を零しながら、ジュルジュルと卑猥な音を立てて、必死に飲み込もうとしている空の頭を撫でた。




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