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「………」
まじでどうなってんだ、俺の身体は…。
何で空の乱れた身体を見ただけで反応してんだよ。確かに空は可愛いと思うけど、それは小動物的可愛さ、それか弟のような可愛さだと思っていたのだが。
「り、く…」
そして空は空で、女の身体を見るわけでなく俺の方に視線を寄越している。普通は女の乱れた様子を見るもんじゃねぇの?何で空は俺の方ばかり見てるんだよ。
「ン、いいわ、…もっと、もっと」
「煩い、黙ってろ…」
喘ぐ女の声が酷く鬱陶しい。
今は空の事考えてんだよ。お前が入ってくるな。
乱暴な口調で黙れと罵れば、女は何故かそれが気に入ったのか、膣内がほんの少しだけ狭くなった。
だけどこんなのでは、全然イけそうにない。
「………くそ、」
早く開放されたくて、俺は自分が先にイくことを諦めて、女を絶頂に導くことに専念する。グチャグチャと鳴る女の膣液の音を聞きながら俺は乱暴に腰を動かした。
すると女は一際甲高い声を上げながら、身体を反らし絶頂を迎えた。
「…………」
女は頬を赤く染めて、乱れた息を整えながら目を閉じて余韻に浸っている。俺は女が目を閉じているのをいいことに、半勃ちになってしまった自身のペニスに被っているゴムをゴミ箱に投げ捨てて、下着の中にペニスを直した。
そして俺のそんな一連の流れを、空は林檎のように顔を真っ赤に染めて見つめている。
ああ、本当に可愛いな…こいつ。
女ではなく、男である空に心の底から可愛いと思ってしまう俺は少しばかり異常だと改めて思う。
「おい、」
俺は女が自分で脱いだ服を拾い、未だにベッドの上で横たわっている女に投げ捨てた。
「……早く帰れ。」
「り、陸、そんな言い方…っ」
「空、煩ぇ。」
「……りく、」
今は空の小言を聞きたい気分ではない。
悲しそうな顔をする空に、少し悪いことをしてしまったと思いながらも、俺は話を進めた。
そして俺は不機嫌さを隠さずに、女に乱暴な言葉を吐き捨てる。女は少しだけ不満そうな顔をしながら服を着て、「また、指名よろしくね」と言いながら、空の頬に軽くキスをするとそのまま帰って行った。
「……………」
「……陸」
嵐が去った。
俺は本気でそう思った。
「陸…」
「…何だよ?」
「やっぱり、怒ってる、…よね?」
「んなの、聞かなくても分かるだろ」
「……う、うん、…ご、めん」
空と居る時間は結構好きなのだが、今は苛々して仕方がない。今更空に当たった所で、空を悲しませるだけだと分かっていても、おもわず冷たい態度を取ってしまう。
「本当に、ごめん…」
「………」
「き、…嫌いになった?俺の、こと?」
「あ?」
「…嫌いになったんだよね?」
「…………」
何?
どう考えれば、そう話を飛躍させられるんだ。
不機嫌なのは確かだけど、俺は空を嫌いになったことなんて一度もねぇ。それは今の状況でも言えることだ。
「…勝手な事言い出したし、俺…馬鹿だし」
「…………」
「それに、…結局陸、…しゃ、射精してないよね…?」
「……は?」
空にも気づかれないように、女の影になって身支度は整えたはずだ。何で、俺がイってないことを…
「俺も、一応男だから、…その、イってないかどうかは、分かる…」
「……ふーん」
「イけなかったから、怒ってるの?」
「…………」
そんなことで一々怒るかよ。
深い溜息を吐いていると、急に空が俺のズボンに手を掛けた。
「…おい、何してんだ?」
「………俺が、出してあげようか?」
「あ゛?」
「俺、…してあげる」
だから機嫌直して、と目元に涙を溜めながら俺のズボンのジッパーを下ろし、下着に手を伸ばす空に俺は今までないくらい焦った。
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