▼ 4
「…エロ、」
「ん、…は、ぁ」
息を荒げて呼吸を整えている空。口端からは飲みきれなかった涎が垂れ落ちている。男である空に言う台詞ではないだろうが、…何というか非常に艶っぽい。俺はおもわず空に見とれてしまった。
今まで見たことのない空の淫靡な姿。
普段のおどおどした小動物の可愛らしさを持つ空が、こんな一面を持っているとは思いもしなかった。
このまま空の姿を見守ってやろうと思っていたのだが、…しかしそう長く見ていることも出来なくなった。何故なら空をイかせたことで満足した女が俺の方に擦り寄ってきたからだ。
「……離せ」
どうせ空は聞いてはいない。
別に女を乱暴に扱ってもいいだろう。
…しかし女は俺の態度に怖気付くわけでもなく、更に甘え付いてくる。
「あの子、凄く可愛いけど…、私は貴方の方が好みなのよね」
だから早く頂戴…、そう耳元で甘ったるく囁いてくる女。
知らねぇよ、そんな事。あー、まじ香水臭い。
俺こいつ相手に勃つだろうか。今更不安になってきた。
「……チッ」
だがここまで来て引き下がるわけにもいかねぇ。
俺はベッドの上に女を乱暴に押し倒し、自身を取り出す。半勃ち(不本意だが空の姿を見て)のものを片手で扱き、コンドームの袋を歯で挟んで破り被せる。
一回イかせてやれば、この女は満足するのだろう。
空がこの女に挿入している所を想像すると、何故だか腸が煮えくり返りそうなので、ここは俺が妥協することにした。俺は愛撫もせず、女の下着を乱暴に脱がして蜜壷にペニスを捩じ込んだ。
「…………」
その瞬間女は嬉しそうに喘ぐ。
だが俺はそんな女とは正反対に、更に気を悪くしていった。
肌に塗りたくったファンデーション。
唇には大袈裟なほど塗っているグロス。
バサバサとした付け睫。
…何処をどう見ても、気持ちが悪い。
きっと一般的に見たらこの化粧だって普通なのだろう。飢えた男たちから見たら極上の女なのだろう。
だが俺は違う。
こんなのは邪魔なだけだ。
……それに、空はこんなものなしに、
「…クソ、」
何で俺はいつも例えに空が出るんだ。
…これじゃまるで俺が空の事…、
俺はそう考える前に首を横に振った。
「………、」
とりあえず早く女をイかせる事に集中しよう。
俺は女の顔が見えなくなるように、挿入したまま体勢を変える。正常位から後背位。これなら女の顔も見えねぇし、女の甲高い声も少しは聞こえ難くなる。
俺は女の細い腰を引き寄せ、腰を動かす。
グチャグチャと鳴る水音が酷く不快だが、これは仕方がない。
「……チッ…、」
俺の深い溜息と舌打ちは、喜ばしいことに女の喘ぎ声で消えた。
つーか、何だこれ。ガバガバ過ぎて、気持ち良くもねぇ。ああー、クソ。折角勃たせたのに萎えそうだ…。
「…り、く…?」
そんな状態で聞こえてきたのは空のか細い声。
顔を真っ赤に染めて、俺と女がヤっている所を見ている。
きっと今まで射精の余韻に浸っていて、俺たちの状態には気付きもしなかったのだろう。
俺は気だるげに一定のリズムで腰を打ち付けながら、空の方に視線を寄越す。
「…………」
空の姿を見てみると、肌蹴たシャツにを着て、萎えた状態での精液に塗れたペニスが見え隠れしている。
「…ん、…大きくなった、ふふふ、嬉しい…、」
そうだ、何故だろう。
女に言われるまでもなく、俺は自分の身体の変化に気付いていた。俺は今紛れもなく、女の膣内の締め付けではなく、空の乱れた姿を見て自身のペニスを膨らませたのだ。
prev /
next