短編集 | ナノ

 12




次の授業は理科の実験のため、教室から理科室まで移動中。そんな時にクラスメイトの友人からこんな事を言われた。


「柊、前より少し男らしくなったよな」

「え?本当?!」


それは男の俺にとっては凄い嬉しい一言で。
にやける顔を抑えきれずに喜んだ。


「本当にすこーしな。少し。」

「…わ、っ、ちょ…髪の毛混ぜんな…っ」

「水泳の補習授業受けて、肌が焼けてるからか。」

「…肌?」

「前まで女以上に白い肌だっただろ?」

「そ、そんなに白くなかったよ」

「だから前より逞しく見えるぜ」


未だに頭を撫でてくる友人に少し腹が立つも、言われた言葉はとても嬉しい。確かにそう言われれば肌も昔より断然黒くなっていると思う。でも体質的にすぐに前の肌の色に戻ってしまうのだけど。
それでも、一瞬でも逞しくなったのだと思うとやっぱり嬉しい。


「あーあ。柊の白い肌、好きだったのになー」

「何それ…?」

「まぁ、こんがり焼けた肌もまた違う魅力があるよな」

「……はぁ?」


急に肩に腕を回してきた友人に俺は心底嫌な顔をした。だって重たい。


「ちょ、…重い…っ」


周りの皆も俺達を見て笑っているだけで助けてくれない。でもこれも友達同士のスキンシップなのだと思えば苦ではない。少し重たいけれど、理科室までの我慢だし、まぁいいかと思っていたら、急に強い力で腕を引かれた。


「……わっ?!」


曲がり角の方で何者かに腕を引かれたのだ。
友人達の声が背後から聞こえる。壁があるため友人達には俺の腕を引っ張った人物は見えていないと思うが、俺はその人物を見てびっくりした。


「東堂せんぱ…いっ?」

「……来い」

「え、…でも授業が、…っ」


俺の声が聞こえていないのか、東堂先輩は強引に俺の腕を引っ張って階段を上がっていく。腕が痛かったものの、見るからにあまり機嫌が良くなさそうな東堂先輩に「痛いから離してください」などと言えるわけもなく、俺は黙って小走りで東堂先輩の後についていった。




「……屋上?」


そう連れて来られた場所は立ち入り禁止場所である屋上だった。何故屋上の鍵を先輩が持っているかは不思議だったけれど、初めて足を踏み入れた場所に俺は凄くドキドキしていた。






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